役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

役に立つ薬の情報~専門薬学

バイアス(無作為化・盲検化)

 

 バイアスとは
バイアス(bias)は英語で「先入観」などの意味をもつ。

 

あるデータを測定すると、本当なら毎回同じ値(真の値)がでるはずである。これが真の値であるが、現実には真の値からずれてしまう場合がほとんどである。

 

例えば、血圧の真の値を測れる測定器Aがあるとする。それに対し測定器Aより毎回約20mmHg低い値を出す測定器Bがあるとする。つまり、測定器Bで測定すると系統的に真の値より20mmHg低くなる。このような系統的なバラつきをバイアスという。
(バイアスは誤差であるが、バラつきではない)

 

もっと分かりやすい例を出そう。新薬の効果を見るとき、患者に次のような2パターンの言葉を言って薬の効果を調べたとする。

 

医師A

「この薬はとてもよく効く薬であり、一週間もすればすぐによくなります。今まで、この薬を飲んで改善しなかった人はいません」

 

医師B

「この薬は新薬ですがあまり効果は期待できないかもしれません。どちらかというと、副作用の方が強くでてしまうかもしれません」

 

この場合、必ずといっていいほど新薬の効果の結果に差がでてしまう。患者の薬に対する先入観で薬の効果が変わってしまうのである。これでは、新薬の本当の効果を知ることができない。一方は効果が低く、一方では効果が高い結果がでてしまう。

 

これでは新薬のテストをしたとしても全く意味がなくなってしまう。このように情報を収集する際に招くバイアスを情報バイアス(Information bias)という。

 

このようなバイアスをなくすために、実際の新薬のテストでは患者だけでなく医師さえもどれが新薬かプラセボかを教えないようにしている。

 

ただバイアスといっても他にも種類があり、選択バイアス(Selection bias)交絡バイアス(confounding bias)などがある。

 

・選択バイアスの例

新薬の効果を調べるとき、歳が40歳以上の人ばかりを集めてしまった。
医師が手術法の安全性を確かめるとき、その手術した医師は腕の良い医師だかりだった。

 

選択バイアスでは研究の対象を集める方法に問題があるために起こるバイアスである。

 

・交絡バイアスの例

タバコとガンの関係を調べるとき、そのなかに酒を飲む人と飲まない人がいたとする。酒もガンにある程度作用するとすると、「タバコとガン」の結果に「酒とガン」の結果も上乗せしてしまうことになる。

 

交絡バイアスは第3の要因によって起こるバイアスである。

 

このように考えると、バイアスを完全に取り除くことは不可能であるということが分かる。しかし、実際の研究ではこのようなバイアスをできるだけ避けるようにしなければならない。

 

 バイアスを回避するためには
・無作為化(ランダム化)
新薬の効果を確かめるとき、新薬を投与する処置群プラセボを投与する対象群が偏っていたらいけない。例えば、重症患者にだけ新薬を投与して軽症患者にはプラセボだけを投与したとする。この場合では「症状の重い軽いで薬の効果に差が出た」ということも考えられるので、新薬の効果を正しく評価することができない。

 

これをなくすために無作為化をする必要があり、重症患者と軽症患者の被検群と対象群の数を同じにしなければならない。

 

無作為化と呼ばれているが、実際には「ルールに沿って作為的に振り分けること」である。

 

○単純無作為化(単純ランダム化)
例えば患者にコインを投げてもらって表が出たら「処置群」に、裏が出たら「対象群」に振り分けるように最初から決めておく。患者の数が多いと処置群と対象群の数は均等になり、さらに重症患者と軽症患者に新薬とプラセボが同じ数振り分けられるようになる。

 

さすがにコインを投げてもらうわけにはいかないので、実際には識別番号を用いて患者が登録した順に各群に割り当てられる。このような方法を単純無作為化という。

 

ただし、単純無作為化は症例の数が少ないと「処置群」と「対象群」の数が同じにならなくなったり、性別や年齢などの要因が一方の群に偏ったりすることがあるので他の方法を用いる必要がある。

 

○ブロック無作為化(ブロックランダム化)
この方法は「処置群(T)」と「対象群(C)」の症例数を同じにするやり方である。例えば、一つのブロックを4例という具合に分割して、そこに「処置群」と「対象群」の症例をそれぞれ二例ずつ配置するようにする。

 

 (T,C,T,C) (T,T,C,C) (C,T,T,C) …

 

このように配置して患者が登録した順でブロックごとに割り当てると、「処置群」と「対象群」の症例数は同じになる。なお、「処置群(T)」と「対象群(C)」の4つの組み合わせの方法は最初に決めておく。このような割り当て方法をブロック無作為化という。

 

○層別無作為化(層別ランダム化)
ブロック無作為では「処置群」と「対象群」の数は同じになるが、性別や年齢,重傷度などの要因が一方の群に偏ることが考えられる。層別無作為化ではこの性別や年齢,重傷度についても考慮して割り当てる。

 

 例、重傷度・年齢の平準化

 

重症

軽症

~20歳

Aブロック

Bブロック

21~40歳

Cブロック

Dブロック

40~60歳

Eブロック

Fブロック

61歳~

Gブロック

Hブロック

 

ブロック無作為化はただ単に割り当てる項目が増えただけで、割り当ての方法はブロック無作為化と同じである。

 

・盲検化
医師が「患者に処方している薬が新薬である」と知っていたら、新薬だから効果があるはずだと患者を詳しく調べるかもしれない。また、効果がありそうな患者ばかりに新薬を処方するかもしれない。これだとバイアスが生じてしまう。

 

また、医師がいつもより注意深く観察するために患者も新薬だと感づくかもしれない。このように患者が感づいた場合もバイアスが生じる。

 

これを防ぐために盲検化が行われる。新薬の効果を検証する臨床試験には、医師にも患者にもどちらが新薬を投与しているかプラセボを投与しているかを教えないのが望ましい。このような試験方法を二重盲検化という。

 

これに対し、患者だけに処置内容を教えない試験を単盲検化という。

 

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