薬が作用する標的(脂質・炭水化物・核酸・タンパク質)
ここのページから、「薬はなぜ効くのか?」を説明していきたいと思います。
薬の作用
ヒトの体の中では多くの化学物質が反応し合っています。そして、そのためさまざまな化学反応が起こっています。
これらの化学反応は生体にとって必要なものであり、化学反応が起こらなければヒトは生きていくことができません。つまり、これら化学物質がお互いに反応し合うことで生命を維持しているのです。
そして、薬も化学物質です。
何が言いたいかと言うと、化学物質の作用によって生体が機能しているので、化学物質である薬がヒトの体に作用することは不思議ではないということです。
薬は体の作用を増強・減少させる
そもそも、ほとんどの薬は生体に新しい作用を引き起こすものではありません。薬の多くは体内の特定の物質の作用を強めたり弱めたりすることで、その効果を発揮します。
例えば、胃酸の分泌が多いため胃潰瘍になったとします。このとき、胃潰瘍の薬は胃酸の分泌を抑えるように働きます。
また、脳内の神経伝達物質の不足によって運動に障害が出たとします。このとき、不足した神経伝達物質を薬によって補います。
このようにして、薬は効果を表すのです。
薬が作用する標的
薬はさまざまな分子に作用することで、その効果を発揮します。この標的となる分子は大きく分けて四つあります。
・ 脂質
・ 炭水化物
・ 核酸
・ タンパク質
これらの標的に作用することで、薬としての効果を表すのです。
脂質
脂質に作用する薬の多くは、細胞膜の構造を乱すように働きます。細胞膜は脂質二重膜で構成されており、これが脂質に作用する薬の標的となるのです。
当然ですが、脂質の構造を乱す働きをヒトに対して起こすのは問題となります。これらの作用はヒトではなく、菌に対して起こすようにします。
例えば、菌の細胞膜に穴を作ります。細胞膜に穴ができると細胞内の中身が外に漏れ出してしまいます。これによって菌が死ぬのです。
炭水化物
細菌やウイルスが宿主細胞に侵入するとき、糖鎖を認識して侵入します。また、炭水化物はヒトの成長や病気に大きく関わっています。
そのため、これらの作用に関わる薬をデザインすれば新たな薬を作ることができます。
核酸
核酸を分かりやすく理解するには、核酸を遺伝子(DNA)だと思えば結構です。
DNAはその情報を読み取られて最終的にタンパク質を合成します。もし、DNAの情報を読み取れなくしてしまえば、タンパク質が作られなくなります。すると、体内の特定の機能が低下してしまいます。
これはDNAの読み取りが異常に多く起こっている場合に有効です。
また、DNAの情報の読み取りを活性化させてしまえば、多くのたんぱく質が作られ、特定の機能を活性化します。
タンパク質
多くの薬はタンパク質に作用します。そもそも、私たちの体を構成しているものの中で、タンパク質は多くの部分を占めています。
体を構成している物質の中で一番多い物質は何か知っていますよね。そうです、水です。私たちの体の約60%は水で構成されています。
それでは、タンパク質はどうでしょうか。 実は、タンパク質は私たちの体の約20%を占めています。
よく考えれば、これは当然のことかもしれません。
髪や皮膚はタンパク質で出来ています。肝臓や肺などの臓器も多くはタンパク質で構成されています。つまり、水を除く骨や体液、脂肪など以外はほとんどタンパク質なのです。
そう考えれば、多くの薬がタンパク質に作用する理由も分かります。なぜなら、生体の多くはタンパク質で構成されているからです。
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