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役に立つ薬の情報~専門薬学

インスリン・ガストリン

 

 インスリンとグルカゴン
インスリンとグルカゴンはすい臓で合成・分泌される。この合成はすい臓のランゲルハンス島で行われる。ランゲルハンス島にはさまざまな内分泌細胞が集まっており、細胞によって合成されるホルモンが異なっている。

 

下に細胞ごとで合成されるホルモンを示す。

 

A(α)細胞

グルカゴン

B(β)細胞

インスリン

D(δ)細胞

ソマトスタチン

 

インスリンは血糖値を下降させる作用があるのに対し、グルカゴンは血糖値を上昇させる作用がある。なお、グルカゴンはインスリンのアンタゴニストとして働き、インスリンと逆の作用を示す。

 

ソマトスタチンは視床下部とD細胞から分泌される。

 

 インスリンの分泌機構
食事などをすると、体内の血糖値が上昇する。つまり、血液中のグルコース(ブドウ糖)の量が増えるのである。

 

インスリンを合成・分泌するB細胞にはブドウ糖膜輸送担体(GLUT2)が存在し、これによってB細胞内にグルコースが取り込まれる。取りこまれたグルコースは解糖系・クエン酸回路によって代謝されてATPを産生する。

 

するとATPの供給が上がり、細胞膜に存在するATP感受性Kチャネルに作用し、Kチャネルを閉じさせる。これによって、細胞膜の脱分極が起こる。

 

(細胞の内側と外側では電位が異なっており、細胞内外の電位差を膜電位という。膜電位は神経軸索の場合で約-70mVとなっており、この膜電位が0mVに近づくことを脱分極という。)

 

K チャネルを閉じることによって陽イオンが流入しなくなり、脱分極を起こす。そのため、Kの代わりにCa2+を流入させることで脱分極を妨げるのである。

 

ATP感受性Kチャネルが閉じた後、Ca2+チャネルが開いてCa2+を流入させる。これが刺激となってインスリンを溜めている分泌小胞からインスリンを分泌するのである。

 

 インスリンの分泌機構

 

 血糖値の調節
ヒトの血糖値は0.08~0.1%(0.8~1.0mg/ml)である。この値が0.03%以下になるとけいれんを起こし、さらに低下すると昏睡状態を経て死亡する。

 

なぜ死んでしまうかであるが、脳はグルコースのみをエネルギーとしているからである。つまり、グルコースがないと脳が働かないのである。

 

実は血糖値を下げる物質はインスリン一種類しかない。それに対し、血糖値を上昇させる物質は複数ある。これは、血糖値が下がってしまうと脳に致命的なダメージを与えてしまうためであり、複数の物質で調節しているのである。

 

血糖値を上昇させる物質には次のようなものがある。

 

・すい臓:グルカゴン、ソマトスタチン
・副腎髄質:エピネフリン
・副腎皮質:コルチゾール
・甲状腺:甲状腺ホルモン

 

インスリン量とグルカゴン量は互いに反比例し、血糖値が上昇すればインスリン量が増加し、血糖値が下がればグルカゴンの量が上昇する。

 

 血糖値、インスリン、グルカゴン量

 

 糖尿病の発症
糖尿病は先天的(遺伝的)な要因と環境的な要因が関係している。糖尿病はインスリンに関係する疾患であるが、それぞれ下のような理由で発症する。

 

・インスリン分子の異常
・インスリンの分泌障害
・インスリン感受性の低下

 

WHOの診断基準によると次の三つの項目のうち、二つ以上に該当する患者を糖尿病としている。

 

随時血糖値が200mg/dl以上
静脈血漿の空腹時血糖値が126mgldl以上
75g経口ブドウ糖負荷試験における2時間値が200mg/dl以上

 

日本の場合は、この項目に一つでも該当していれば糖尿病としているので、WHOの診断基準よりも厳しい形となっている。

 

なお、糖尿病による合併症には主に次の三つがある。

 

・網膜症
・腎障害
・末梢神経障害

 

・1型糖尿病
1型糖尿病はインスリン依存性糖尿病であり、インスリン注射が必要不可欠である。1型糖尿病の場合、インスリンの分泌が低下しているのである。

 

これはB細胞の破壊によって起こるが、その原因としてはウイルス感染(ウイルスによって破壊)や自己免疫疾患などがある。

 

遺伝的要因は低く、25才以下の若年者に多い。また、肥満体質は関係ない。

 

・2型糖尿病
日本人の90%以上が2型糖尿病であり、遺伝的要因が高く、中年以降に多い糖尿病である。これはインスリン分泌の低下とインスリン感受性の低下によるものである。

 

インスリン感受性の低下とは、インスリンは血中に十分存在するが、細胞がインスリンを受け取りにくくなっている状態のことを指す。つまり、インスリンが細胞に作用しにくくなっているのである。

 

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