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役に立つ薬の情報~専門薬学

抗がん剤の概要:がんを発症する仕組み

 

 がんとは
がんは悪性腫瘍(あくせいしゅよう)や悪性新生物(あくせいしんせいぶつ)とも呼ばれる。がんを治療しないで放置しておくと、全身に転移して死を招くようになる。

 

これらがんは、もともと正常な細胞が変異してがん細胞へと変わってしまったものである。正常な細胞であれば、勝手に細胞分裂をすることはない。傷を負った時などに、修復目的で新たに細胞分裂を行うくらいである。

 

それに対して、がん細胞では勝手に増殖を続けてしまう。このように、がん細胞には「無限増殖する」という特徴がある。

 

また、正常な細胞であれば隣の臓器を侵すことはない。例えば、肝臓や肺などの細胞が骨を侵すことは通常ない。肝臓の細胞は肝臓に、肺の細胞は肺に留まっている。

 

しかし、がん細胞はその場に留まることがなく、隣にある臓器やリンパ節、骨などに染み出るように広がっていく。このように、隣り合う組織を侵していくことを浸潤と呼ぶ。

 

また、がん細胞は隣接する組織だけでなく、血液やリンパ液などに乗って体中のあらゆる組織に広がっていく。がん細胞のこのような過程を転移と言う。

 

 がん細胞の特徴

 

 ・なぜがんで死ぬのか
そもそも、「なぜがんで死亡するのか」を考えたことはあるであろうか。

 

例えば、心不全であれば心臓の機能が低下することによって血液が正常に送られなくなる。血液は全身に酸素や栄養を届けるため、血液が送られなくなると当然ながら死に至る。

 

また、脳梗塞であってもなぜ死に至るかを容易に想像できる。脳の血管が詰まる脳梗塞では脳細胞が死滅していく。脳は全てをつかさどる司令塔であるため、この細胞が死滅すると死に至る。

 

しかし、がんは言ってしまえば「細胞が増える」というだけの病気と考えることもできる。では、なぜがん細胞が増えると私達は死んでしまうのだろうか。

 

この理由の一つとして、悪液質(あくえきしつ)という言葉が重要となる。悪液質とは、簡単に言うと栄養失調の状態を指す。

 

がん患者の最後では、やせ細っている人が多い。これは、食事をいくら取っても痩せてしまうために起こる。なぜ十分に栄養を取っても痩せるかと言うと、この栄養失調状態である悪液質に陥っているからである。

 

細胞が増殖するためには栄養が必要となる。このとき、がん細胞がある程度大きくなると、周りにある正常な細胞からの栄養を吸い取るようになる。

 

体中のあらゆる細胞から栄養が取られるため、正常な細胞はその分だけ栄養が足りなくなる。このようにして、栄養失調状態に陥ってしまう。

 

これが、がん患者の末期では痩せている人が多い理由である。つまり、やせ細っているがん患者では悪液質による栄養失調となっている可能性が高い。栄養失調の状態では免疫が落ち、肺炎などの症状を引き起こす可能性が高くなるのである。

 

また、がん細胞が増えるとその分だけ正常な細胞の割合が少なくなってしまう。例えば、肺がんであれば呼吸機能に関わる正常な細胞ではなく、呼吸に関与しない増殖だけを目的とする異常ながん細胞に取って代わるようになる。これによって、呼吸不全を起こして死に至る。

 

他にも、肝臓がんであっても同じである。肝臓はタンパク質や脂質、アンモニアなど、体の正常な代謝・解毒機能に関わっている。ここにがん細胞が増殖すると、正常な肝臓細胞の割合が減っていく。すると、体の代謝機能に異常が起こってしまう。

 

肝臓の機能低下によってタンパク質が作られなくなると、体内に水が溜まる腹水や胸水などが起こる。すると、呼吸機能が低下してしまう。

 

また、アンモニアの解毒作用が出来なくなると昏睡状態に陥ることもある。腎臓の機能が悪化するなどの症状も表れる。

 

 がんによって死亡する理由

 

このように、がんは「ただ単に細胞が増えるだけの病気」ではない。悪液質などの「栄養失調状態」や正常細胞に取って代わることによる「臓器の機能低下」などによって、さまざまな弊害が引き起こされることで死に至らしめる。

 

 

 がん発生のメカニズム
がん細胞はもともと正常な細胞が変異したものである。そして、このとき正常な細胞のがん化を考える上で最も重要なものに遺伝子がある。

 

がんの発生には、発がん物質などによって遺伝子に傷がつくことがある。しかし、この時の遺伝子の傷は体にもともと備わっている修復機構によって元通りに直される。

 

ただし、この修復機構が完全に働かない状態であると、遺伝子に傷が残ったままとなる。ここにさらに傷が重なり、遺伝子の修復がうまく働かなかったりコピーミスが起きたりすると細胞のがん化が起こる。

 

このように、がん細胞が発生するためには遺伝子の異常がいくつも重なる必要がある。そのため、がんの発生は何十年もの遺伝子エラーの積み重ねが起こった結果として起こる。

 

ただし、がん細胞が発生したとしても体の免疫機構が感知して、がん細胞を破壊するように働く。そのため、基本的にはがん細胞が発生したとしても問題ない。

 

しかし、がん細胞を抑制するための免疫機能が不十分だったり、がん細胞を見逃したりすると、がん細胞の塊として悪性腫瘍が発生する。これが、がん発生のメカニズムとなっている。

 

 がん細胞の発生メカニズム

 

 ・遺伝子に傷をつけたり、がん化を促進させたりする因子
細胞のがん化には「遺伝子に傷をつける作用」や「がん化を促進させる機能」を有する因子に曝露することによって起こる。

 

このような因子としては以下のようなものがある。

 

 遺伝子に傷をつけたり、がん化を促進させたりする因子

 

 ① 発がん性物質
発がん性物質とは、その名の通りがんを発生させる物質のことを指す。例えば、発がん性物質としてはタバコが有名である。タバコの煙によって肺がんのリスクが高まるのである。

 

他にも、焦げのある食物や粉塵などもこれに該当する。粉塵として問題となった物質としてアスベスト(石綿)がある。アスベストは悪性中皮腫の原因となることが知られており、現在では使用が禁止されている。

 

 ② ウイルス
ウイルスによっても細胞のがん化が起こる。例えば、C型肝炎ウイルスは肝臓がんの因子となる。C型肝炎ウイルスは肝臓に炎症を起こすことによって肝硬変を引き起こし、これが進行して肝臓がんへと変化する。

 

他にも、ヒトパピローマウイルス(HPV)によっても細胞のがん化が起こる。性行為によって感染するウイルスであるが、子宮頸がんの原因ウイルスとなっている。

 

 ③ 紫外線・放射線
日光に含まれる紫外線が皮膚がんの原因となることは有名である。それでは、なぜ紫外線が皮膚がんの要因になるかと言うと、紫外線は皮膚細胞の遺伝子に傷をつけるからである。

 

少しの傷であれば、遺伝子の傷はすぐに修復される。しかし、大量の紫外線を浴びるとその分だけ多くの傷が遺伝子につく。

 

そのため、傷が十分に修復できなかったり間違えて修復されたりする。これによって、遺伝子に変異が起こる。この変異が蓄積されていくと、ある時点で細胞のがん化が引き起こされるようになる。

 

そして、紫外線よりも作用の強い発がん因子として放射線がある。放射線は紫外線よりもエネルギーが強いため、その分だけ発がん作用も強力になる。

 

 ④ 加齢
年を取るとその分だけ免疫機能が低下してしまう。がん細胞が発生した時、このがん細胞を排除するために体の免疫が重要な働きをする。そのため、免疫が低下している高齢者になるほど細胞のがん化が起こった時の細胞増殖を抑えることが出来なくなる。

 

また、高齢者になるほど遺伝子が傷ついた時の修復機構に異常が起こる。これも、細胞のがん化に加齢が関係している理由となる。

 

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