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小児、高齢者、妊婦の薬物動態

 

 

 新生児・乳児・小児の薬物動態
小児科領域において、生後4週間までを新生児、2歳未満を乳児という。この新生児と乳児の時期では生体機能の発達が著しいため、薬物投与において注意が必要となる。

 

・吸収
新生児では胃液のpHが比較的高い傾向がある。そのため、酸性薬物の溶解性は上昇し、吸収性は低くなる。また、塩基性薬物の吸収性は高くなる。

 

新生児では腸管内でのβ-グルクロニダーゼ活性が成人よりも高くなっている。そのため、グルクロン酸抱合を受けた薬物であっても、消化管内で脱抱合を受け、腸肝循環しやすくなっている。

 

未熟児の場合、内因性界面活性剤である胆汁量が少なくなっている。そのため、脂溶性薬物の吸収は少なくなる。ただし、皮膚におけるバリア機能はあまり発達していないため、皮膚からの薬物吸収は成人よりも高くなる。

 

・分布
新生児では血清アルブミン、α-酸性糖タンパク、リポタンパクなどの値が低い。これらの血中タンパク質量が低いため、多くの薬物において成人よりもタンパク結合率が低くなることが多い。

 

なお、血中ビリルビン濃度は比較的高くなっている。

 

・代謝(新生児)
CYP活性は出生後において急激に増加し、生後1週間〜3ヵ月でほぼ成人値まで到達する。下図のように、一週間で成人値のCYPに達する場合があれば、3ヵ月でかかって成人値のCYPに達する場合もあり、この期間において新生児の薬物代謝能において、薬物代謝の個体差が大きいことが分かる。

 

   新生児におけるCYPの個体差

 

第二相反応において、硫酸抱合能は成人とほぼ変わりがない。ただし、グルクロン酸抱合能においては出生後で増加する。そのため、グルクロン酸抱合によって排泄される薬物は蓄積されやすい傾向がある。

 

なお、グルクロン酸抱合能が未発達な新生児や未熟児の場合、クロラムフェニコールを投与してはいけない。クロラムフェニコールはグルクロン酸抱合を受けて代謝されるため、グルクロン酸抱合能が未発達な新生児や未熟児ではクロラムフェニコールを正常に代謝することができない。

 

もし、この時期にクロラムフェニコールを投与した場合、グレイ症候群(灰白色症候群)を起こしてしまう。

 

・代謝(小児)
小児の薬物代謝速度は成人よりも大きくなる。成人に比べて単位体重当たりのクリアランスは大きくなり、消失半減期は短くなる。

 

・排泄
新生児・乳児では腎での薬物排泄能が低いため、腎排泄型の薬物は蓄積しやすい傾向がある。出生時における腎糸球体ろ過速度(GFR)は2〜4mL/minであるが、五ヶ月後にはほぼ成人値(120mL/min)に達する。

 

 小児における薬物量の算出
小児では分布容積などのさまざまな要素が成人と比べて異なってくる。そのため、小児に薬物を投与するときは薬物量を調節しなければならない。これには、以下に示す三つの方法がある。

 

 Youngの式 : 小児量 = 成人量×{年齢/(年齢 + 12歳)}

 

 Augsbergerの式 : 小児量 = 成人量×{(年齢×4 + 20歳)/100}

 

 Crawfordの式 : 小児量 = 成人量×(体表面積 m2 × 1.73 m2)

 

 高齢者の薬物動態
高齢者の場合、成人に比べて薬物動態が大きく変化している。そのため、薬物の投与量や投与間隔を調節することが必要である。ここで難しいのは、一般化できないということである。

 

・吸収
高齢者では薬物吸収能が低下している。これは消化管血流量、胃内酸度、腸管の表面積など、これら全て低下しているためである。

 

高齢者の場合、薬物吸収が低下しているが薬物の代謝・排泄能における低下の方が著しいため、一般的に薬物の作用・副作用は増大する傾向にある。

 

・分布
高齢者では成人に比べて体の総水分量が約17%減少している。また、体脂肪も約35%増加する。そのため、薬物の分布容積が減少してしまう。

 

また、肝で作られる血清アルブミンは10〜20%減少する。そのため、遊離型薬物濃度が増加する。

 

・代謝
高齢者では肝代謝が減少している。これは、肝臓の細胞数(肝実質量)が減少しているためであり、これにって薬物代謝酵素の減少や肝血流量の低下が起こる。

 

これらの変化により肝初回通過効果が低下するため、薬物のバイオアベイラビリティは増加する。つまり、予想されるよりも多くの薬物が血中に入ってくるのである。肝代謝酵素活性も減少する。

 

・排泄
高齢者ではたとえ腎疾患がなく血清クレアチニン値が正常だとしても、糸球体ろ過速度(GFR)が減少する。これは、腎血漿流量の低下や糸球体数の減少(30〜35%)による。

 

 妊婦の薬物動態
妊婦において注意する点は次の三つである。

 

・胎盤透過性
・乳汁への移行性
・催奇形性

 

この三つが、薬物投与において最も注意しなければならない点である。

 

妊婦時では組織間液量や循環血流量が増加し、その結果として分布容積が増加する。水分が増加するということは、アルブミン濃度が低下するということである。これにより、遊離型薬物が増加する。

 

遊離型薬物が増加するということは、その分だけ糸球体によってろ過されやすくなる。つまり腎排泄が増大し、定常状態での血中濃度が減少するのである。

 

薬物における胎盤通過は、母体に存在する遊離型薬物が受動拡散によって移行する。このときの移行速度は母体と胎児間の濃度勾配によるものであり、イオン型薬物よりも非イオン型薬物の方が透過しやすい。また、胎児中のアルブミンは母体よりも高濃度で存在するため、タンパク結合性が高い薬物にも注意する必要がある。

 

薬物の乳汁移行では、母体中の遊離型薬物の受動拡散によって移行する。

 

 疾患をもつ患者の薬物動態
ある特定の疾患をもつ患者でも、薬物動態が変化する。ここでは、「肝疾患」と「うっ血性心不全」について述べる。

 

・肝疾患
肝疾患患者では肝実質は減少している。つまり、薬物のVmaxは減少する。また、アルブミンは肝臓で作られるため、アルブミン濃度も減少する。

 

・うっ血性心不全
うっ血性心不全患者では心拍出量が減少してる。そのため、肝血流量・腎血流量・消化管血流量が減少する。また、浮腫が起こるため細胞外液貯留が起こり、分布容積にも変化が起こる。

 

このように、疾患をもっているというだけで正常患者と比べて薬物動態が変化することがあるため、注意が必要である。

 

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