小柴胡湯物語:漢方薬で起こった重篤な副作用
漢方薬の中には重篤な副作用として間質性肺炎を有するものがあります。その中でも、間質性肺炎で特に問題となった漢方薬として小柴胡湯(しょうさことう)があります。
小柴胡湯は慢性肝炎やかぜに使用される漢方薬です。ただ、慢性肝炎の中でもC型肝炎に対しても使用されます。
小柴胡湯による間質性肺炎
漢方薬はその人の体質や症状に合わせて使用する薬です。そのため、本当のことを言えば漢方薬には「慢性肝炎」や「かぜ」などの概念はありません。漢方薬は病名を付けて治療するのではなく、あくまでも体質や症状に合わせて服用する薬です。
このような中、1980年代の後半からC型肝炎の治療薬としてインターフェロンと呼ばれる薬が有効であることが分かりました。現在ではC型肝炎の治療法も進化していますが、当時は「インターフェロンにより効果がある」と言ってもその有効率は20~40%程度でした。
そこで、「インターフェロンによる治療でも無効であった患者さんに対して小柴胡湯を追加してはどうか」という考えが専門家の間で持ち上がりました。実際、小柴胡湯を追加することでC型肝炎が劇的に改善したという例がいくつも報告されていたのです。
ただし、小柴胡湯が漢方薬である以上は何度も言うように患者さんの体質や症状を見る必要があります。専門的な言葉で言えば、患者さんの「証」を見極めることが大切となります。何でも良いので小柴胡湯を使用しても効果がありません。
証の合う人に漢方薬を使用すれば、劇的に症状が改善します。しかし、証に合わなければいくら漢方薬を服用しても症状は改善しません。これを理解せずに漢方薬を服用している人がほとんどです。
インターフェロンと小柴胡湯の併用禁止
インターフェロンに小柴胡湯を追加することでC型肝炎から劇的に改善したという報告から、全国的にこの方法が行われるようになりました。しかしその後、副作用として間質性肺炎による死亡例が多発したのです。
これを受けて、政府は1994年にインターフェロンと小柴胡湯の併用を禁止しました。
ただし、その後の1998年~1999年の二年間だけでも小柴胡湯による間質性肺炎が50例報告されています。このうち、8例が死亡例です。
このように、漢方薬と言っても副作用がない訳ではありません。漢方薬が医薬品である以上、重篤な副作用によって死亡してしまうこともあります。副作用なしに病気だけを治療するような都合の良い薬はこの世に存在しません。
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