排出障害・頻尿と前立腺肥大症の治療薬
排尿筋 (膀胱平滑筋)の構造
排出障害・頻尿の治療薬を学ぶ前に、まず膀胱の構造を知っておく方が理解しやすい。下に膀胱・尿路・排尿筋の構造について示す。
見て分かるとおり、膀胱の周りに排尿筋が取り囲んでいる形となっている。ちなみに、排尿筋の別名は膀胱平滑筋である。平滑筋なので、アセチルコリン(ACh)
によって排尿筋は収縮する。
・排出障害治療薬
排尿障害の患者は膀胱の収縮が困難になっているため、排尿障害が起こる。そこで、尿を外に出す機能が弱くなっている排出障害の患者に対し、膀胱を縮させることで排尿を促進させる。
膀胱が小さく縮まってしまうということは、排尿筋(膀胱平滑筋)が収縮するということである。
排出障害治療薬の場合、排尿筋を収縮させるためにM受容体刺激薬が用いられる。
・ベタネコール(商品名:ベサコリン)
・ネオスチグミン(商品名:ワゴスチグミン)
・ジスチグミン(商品名:ウブレチド)
・頻尿治療薬
これら排出障害治療薬に対し、頻尿では「おしっこが近い」、「夜に排尿のため、何回も目が覚める」などの症状が表れる。これは、膀胱の筋肉がきつくなっているため、おしっこを我慢できないことで起こる。
通常、尿が溜まるにつれて膀胱の筋肉も広がっていく。しかし、頻尿患者では膀胱の筋肉が広がりにくいため何回も排尿のためにトイレに行きたがる。
頻尿治療薬は平滑筋収縮の逆の作用をする薬物を選べばよい。つまり、抗コリン薬やβ2受容体刺激薬が用いられる。
・プロピベリン(抗コリン薬、商品名:バップフォー)
・オキシブチニン(抗コリン薬、商品名:ポラキス)
・クレンブテロール(β2受容体刺激薬、商品名:スピロペント)
この作用により、膀胱を収縮させる筋肉(排尿筋)を弛緩させ、膀胱の容量を増大させる。
前立腺肥大症と治療薬
前立腺は膀胱のすぐ下にある。そして、前立腺は尿道を包みこむ形をとっている。もし前立腺が肥大して尿道を圧迫するようになると、排尿障害が起こる。なお、前立腺肥大症には加齢が関係しており、50歳以上で発症しやすくなっている。
次に前立腺が肥大している様子を示したいと思う。
普通の状態では、前立腺は尿が通るのを邪魔したりはしない。しかし前立腺が肥大してくると、図の通り尿道が狭くなって尿が通りにくくなってしまう。
前立腺肥大症治療薬
・α受容体遮断薬、抗アンドロゲン薬
前立腺肥大症の治療薬にはα1受容体遮断薬と抗アンドロゲン薬がある。
前立腺にはα1A受容体やα1D受容体が存在しており、前立腺肥大症にはα1A受容体・α1D受容体を特異的に遮断する薬物を使用する。また、前立腺肥大にはアンドロゲン(男性ホルモン)も関与しているため、アンドロゲンを遮断することによっても前立腺肥大症を治療する。
α受容体を遮断すると、尿道が拡張する。また、アンドロゲンを遮断することによって前立腺自体を小さくする。これによって、前立腺肥大症を治療する。
・タムスロシン(α1A受容体阻害薬、商品名:ハルナール)
・シロドシン(α1A受容体阻害薬、商品名:ユリーフ)
・ナフトピジル(α1D受容体阻害薬、商品名:フリバス、アビショット)
・クロルマジノン(抗アンドロゲン薬:商品名:プロスタール)
・5α還元酵素阻害薬
男性ホルモンのひとつであるテストステロンであるが、このテストステロンをより活性の高いジヒドロテストステロンに変換する酵素が存在する。
この酵素を5α還元酵素と呼び、この酵素を阻害することで前立腺肥大症を治療することが出来る。
・デュタステリド(5α還元酵素阻害薬、商品名:アボルブ)
・植物エキス製剤、漢方
前立腺肥大の治療に植物エキス製剤や漢方も用いられる。植物エキス製剤であれば、エビプロスタットが治療に使用されている。
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