十全大補湯の効能:体力低下、疲労倦怠、食欲不振、貧血
病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振など、体調が何となく悪い場合が存在します。このようなときに使用する漢方薬に十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)があります。
十全大補湯には、体力や気力を補う働きがあります。これにより、体がだるくなっている状態を改善させるのです。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)と体力
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。十全大補湯であれば、次のような人が有効です。
・虚弱な体質
・全身が衰弱している
・血流が滞っている、貧血
・心身疲労がある
体力低下や疲労倦怠などに十全大補湯を使用するため、全体的に体が弱っている人に対して活用します。体力旺盛な人に使用しても効果を望めないので、投与対象の人の様子を見極めないといけません。
なお、十全大補湯は漢方の古典である「和剤局方(わざいきょくほう)」に記載されています。中国が宋の時代であったとき、1107~1110年に国が関与する中で発行された医薬品の処方集が和剤局方です。
十全大補湯の作用
体力などを補う十全大補湯には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の10種類が配合されています。
・当帰(とうき)
・川芎(せんきゅう)
・芍薬(しゃくやく)
・地黄(じおう)
・蒼朮(そうじゅつ)
・茯苓(ぶくりょう)
・人参(にんじん)
・桂皮(けいひ)
・黄耆(おうぎ)
・甘草(かんぞう)
当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)には血行を改善させる作用があります。また、地黄(じおう)には滋養強壮作用が知られています。これらを組み合わせることで、虚弱体質を改善させる薬が十全大補湯です。
漢方では、気や血の巡りなどを重要な判断材料にします。このとき、病気に対する抵抗力が著しく低下している方が存在します。そこで、このような弱っている状態を「十全(完全)に大きく補う」という意味で、十全大補湯という名前が付けられたと考えられています。
薬の作用を調べる試験でも、十全大補湯を使用することで病後の体力低下や手足の冷え、貧血に対する作用が動物実験などで確認されています。病後の体力低下には、感染症を発症したときや抗がん剤・放射線治療を行った後の体力低下も含みます。
十全大補湯の使用方法
十全大補湯を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。
十全大補湯を慎重に投与すべき対象としては、「著しく胃腸の虚弱な人」「食欲不振、悪心、嘔吐のある人」などがあります。薬の投与により、これらの症状悪化を招く恐れがあるからです。
これら十全大補湯としては、
・病後の体力低下
・疲労倦怠、食欲不振
・ねあせ
・手足の冷え
・貧血
などの症状に有効です。同じように気力を補う漢方薬として「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が知られています。この補中益気湯に比べて、さらに体力の消耗が激しい人に対して十全大補湯が使用されます。
十全大補湯が全体的な体力や生理機能を補うことから、がん治療の補助として用いられたり、冷えや疲れによる不妊症を改善するために活用されたりすることもあります。
このような特徴により、日ごろから体力を含めて虚弱な体質であり、貧血傾向や疲労倦怠などがみられる人に対して効果を示す漢方薬が十全大補湯です。
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