食品の腐敗・褐変現象・発がん物質
食品の腐敗
食品の腐敗は微生物の増殖によってタンパク質が変質することによって起こる。そのため、微生物が繁殖しやすい環境では腐敗が起こりやすい。
腐敗は脱炭酸反応・脱アミノ反応・還元などによって引き起こされる。
・アミノ酸の脱炭酸反応
アミノ酸は分子構造中にカルボン酸とアミンをもつ。脱炭酸によってカルボン酸が抜けると、後にはアミンが残る。この残ったアミンが腐敗アミンである。
腐敗アミンには次のようなものがある。アミンなのでヒスタミン・チラミンなど、たいていは「~アミン」と名前がつく。
アミノ酸 |
腐敗アミン |
|
ヒスチジン チロシン トリプトファン アルギニン リシン |
→ → → → → |
ヒスタミン (アレルギー物質) チラミン トリプタミン アグマチン カダベリン |
・脱アミノ反応
アミンが脱離すると、アンモニアが生成する。アンモニアなので当然ながら悪臭を放つようになる。
・トリメチルアミンオキシドの還元
トリメチルアミンオキシドは魚類に特有の成分である。この成分が還元されるとトリメチルアミンとなる。トリメチルアミンは魚が腐ったときの臭いの原因の一つである。
・トリプトファン、システインの分解
トリプトファン、システインが分解するとそれぞれスカトールとメルカプタンが生成する。スカトールは便臭、メルカプタンは硫黄臭を放つ。
褐変現象
褐変現象には「酵素が関与するもの」と「酵素が関与しないもの」が存在する。酵素が関与する方を酵素的褐変現象と呼び、酵素が関与しない方をメイラード反応(非酵素的褐変現象)と呼ぶ。
・酵素的褐変現象
皮をむいたリンゴを空気中に置いておくと、茶色に変色してくる。これは褐変現象の一つであり、これにはポリフェノールオキシダーゼという酵素が関与している。
ポリフェノールオキシダーゼによってカテキン類が酸化されると、メラニン色素を生成する。これによって茶色に変色していくのである。この現象はリンゴ以外にバナナやジャガイモなどでも起こる。
・メイラード反応(非酵素的褐変現象)
メイラード反応とは、糖(還元糖)がアミノ酸と反応してメラノイジンを生成する現象である。これによって褐変物質が作られる。メイラード反応では酵素は無関係であり、脂質も関与しない。
食品由来の発がん物質
食品由来の発がん物質としては、ニトロソアミン類やヘテロサイクリックアミンなどがある。
・ニトロソアミン類
ニトロソアミン類は主に生体内で生じる発がん物質である。ニトロソアミン類の発生には第二級アミンと亜硝酸塩が必要である。第二級アミンは魚や肉に存在し、亜硝酸塩は発色剤として含まれる。また、亜硝酸塩は野菜に含まれる「HNO3」の還元によっても発生する。
第二級アミンと亜硝酸塩は酸性条件下(胃内)においてニトロソアミン類を発生させる。
・ヘテロサイクリックアミン
ヘテロサイクリックアミンは食品中のアミノ酸、タンパク質を加熱することによって生成される。ヘテロサイクリックアミンは二次発がん物質であり、代謝を受けることによって発がん性を示すようになる。
ヘテロサイクリックアミンとして加熱によってトリプトファンからTrp-P-1が生じ、グルタミン酸からはGlu-P-1が生じる。
ヘテロサイクリックアミンは生体内でシトクロムP450によるN-水酸化を受けヒドロキシルアミンとなる。その後、アセチル抱合を受けてニトレニウムイオンとなり発がん性を示す。
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