脂質と脂肪酸の役割
脂質を大きく分けるとケン化性脂質と非ケン化性脂質に分けることができる。
ケン化性脂質 … 脂肪酸とアルコールのエステル
非ケン化性脂質 … 脂肪酸とアルコールのエステルでない
脂肪酸の特徴
・生体に含まれる脂肪の炭素数は偶数である。これは脂肪がアセチルCoAから合成され、そのアセチルCoAに含まれる炭素数が2だからである。
・脂肪酸は疎水性と親水性を示すカルボキシル基ももつため両親媒性を示す。
・脂肪酸の融点は不飽和結合が増すと融点が下がる。
・シス形とトランス型ではシス形の方が融点が低い。天然に存在する不飽和脂肪酸は、ほとんどがシス形である。
・水中ではミセルを形成する。
構造表記
脂肪酸の構造を記号によって表記する方法がある。
このときカルボキシル基の炭素原子を1位として数え隣り合う炭素原子を2位、3位と順に数えていく。
二重結合の数と位置を表すにも規則がある。例えば、⊿5なら脂肪酸の5位と6位の間に二重結合があるということを表す。
また、ω3とはカルボキシル基の反対側の炭素から数えて3番目に二重結合をもつことを表す。これはn-3も同じ意味である。
必須脂肪酸
生体で生合成される脂肪酸に炭素数16で二重結合がないパルミチン酸は16:0で表される。同じようにステアリン酸は18:0、ステアリン酸に二重結合を1つ含むオレイン酸は18:1と表すことができる。
また18:2のリノール酸、18:3のリノレン酸、20:4のアラキドン酸が存在する。パルミチン酸からオレイン酸は体内で合成できるがオレイン酸からリノール酸は合成できないので、この3つの脂肪酸は必須脂肪酸と呼ばれている。
これは、ヒトを含む高等動物は脂肪酸の9位を越えて二重結合をつける酵素が存在しないためである。
二重結合による性質の変化
二重結合があるため、脂肪酸にはシス型とトランス型が存在する。天然に存在するのはほとんどがシス形となっている。融点はシス形の方が低い。
また、二重結合が多い(不飽和度が高い)と融点が低くなる。そのため、水素を添加すると融点が上がるので脂肪酸が固まってくる「硬化」が起こる。
中性脂肪
これらの脂肪酸は実際には脂肪酸という形では生体内に存在していない。脂肪酸のほとんどは中性脂肪の構成成分として取り込まれ、エネルギー源として蓄えられている。
主な脂肪酸貯蔵物質はトリアシルグリセロールである。
リン脂質
リン脂質とはアルコールと脂肪酸のほかにリン酸基を含む物質である。リン脂質の中でアルコール部分がグリセリンであるリン脂質はグリセロリン脂質、アルコール部分がスフィンゴシンであるリン脂質はスフィンゴリン脂質という。
また、細胞膜はリン脂質の二重膜で構成している。
Xの部分は親水性の分子を含んでおり、たいてい の電荷を持つものが多い。
スフィンゴリン脂質には糖が結合している事が多い。スフィンゴシンに脂肪酸が結合したものをセラミドという。このセラミドの構造は糖脂質にも存在する。さらに、セラミドに糖が結合したものをセレブロシドという。
脳や神経細胞などの神経系のリン脂質にはスフィンゴリン脂質が多量に含まれている。また、神経系にはスフィンゴミエリンが大量に存在し、これを加水分解すると脂肪酸、リン酸、塩基(コリン)、スフィンゴシンを生じる。
糖脂質
糖脂質とはアルコールと脂肪酸と糖質との化合物である。
糖脂質は特に神経組織に広く存在している。糖脂質のアルコール部分はスフィンゴシンであるものが多く、グリセリンであるものは少ない。
非ケン化性脂質
非ケン化性脂質にはステロイドやテルペン構造を有するものがある。
ステロイド構造
・コレステロール…生体内でアセチルCoAから生合成される。
・胆汁酸…脂肪をミセル中に取り込むため-OH基を持つ。
・ステロイドホルモン…副腎皮質ホルモン、性ホルモンなどがある。
・ビタミンD
テルペン構造
テルペン構造とはイソプレン単位で重合したものである。
・ビタミンA、K、E
ビタミンD、A、K、Eは脂溶性ビタミンである。
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