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狂犬病ウイルスの恐怖

 

2006年11月16日、日本人男性がフィリピンへの旅行中に犬に噛まれ、狂犬病を発症したと厚生労働省が発表しました。狂犬病はとても怖い病気です。なぜなら、発症するとほぼ100%の確率で死んでしまうからです。

 

狂犬病はウイルスによって発症します。このウイルスの名前を「狂犬病ウイルス」と言います。

 

このウイルスが感染したとしても、後の対策をきちんとしておけば狂犬病はほぼ間違いなく防ぐことができます。

 

 狂犬病とは
狂犬病はウイルスによって発症します。また、狂犬病ウイルスはほとんどの哺乳動物に寄生することができるため、狂犬病は人畜共通感染症と呼ばれています。

 

つまり、犬の他にネコ、コウモリ、キツネ、アライグマなどの動物も狂犬病ウイルスを保有している可能性があります。

 

感染は噛まれた傷口から起こります。傷口から侵入し、筋肉などの組織で増殖したウイルスは神経細胞を通って脳まで移行します。その後、唾液腺まで移行し、ウイルスが排出されます。

 

感染から発症までの潜伏期間は1~2ヶ月と言われています。しかし、潜伏期間の長さは感染部位や感染したウイルスの量などによって異なります。感染から7年で発症したという報告もあります。

 

狂犬病の初期症状には頭痛、全身倦怠などがあり、その後筋肉の痙攣を起こします。このとき、水を飲み込もうとすると喉が痙攣し、強い苦痛を伴います。これによって水を怖がる恐水症の状態になります。(狂犬病は恐水病とも言います)

 

 狂犬病の予防、治療
狂犬病を発症するとほぼ100%死んでしまいます。そのため、ウイルスに感染したら、狂犬病を発症しないように適切な処置をしなければなりません。

 

具体的にはワクチンを打つことです。ワクチンを最初に打った日から3,7,14,28,90日の最大6回必要です。

 

また、狂犬病ウイルスは比較的弱いウイルスです。そのため、海外で動物に噛まれたらすぐに消毒することが大切です。

 

まず噛まれた部分を石鹸水で洗い、アルコール(エタノール)で消毒します。これだけでも、かなりの狂犬病ウイルスが死滅してくれます。

 

なお、WHOは最初のワクチン接種に抗狂犬病ヒト免疫グロブリン(HRIG)の接種を勧めていますが、日本では入手困難です。これは、このワクチンが日本で未承認なためです。

 

 狂犬病からの生還
世界には狂犬病を発症しても助かった人がいます。その中でも狂犬病ワクチンを打たずに生還した人がいます。

 

ワクチンを打たずに狂犬病から生還したのは15歳の少女であり、これは世界で初めてのことでした。

 

この成果に関する論文のがNew England Journal of Medicine誌に載りました。ここでは、その一部を紹介します。

 

狂犬病からの生還

 

また、この事に関する記事がアメリカの新聞「New York Times」にも載りました。

 

Girl Is First to Survive Rabies Without a Shot

 

狂犬病はとても恐い病気です。当然ですが、発症しないのが一番です。少しでも感染の疑いがあるなら、適切な処置して狂犬病を予防しましょう。

 

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