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発展途上国では理学療法士が診断や処方を行う

 

<ライター:発展途上国で活躍する理学療法士>

 

日本と比べたとき、発展途上国の医療では仕事内容に違いがあります。そこで、タンザニアで理学療法士として活動している観点から、具体的な仕事内容の違いを説明したいと思います。

 

 途上国では理学療法士が診断を行う
まず、日本の一般的なリハビリの流れですが、患者さんははじめに医師のところへ受診に行きます。そこで、診断を行い、必要であればリハビリの指示が出ます。その段階になって、ようやく理学療法士の仕事となります。

 

一方、タンザニアでは、理学療法士の立場が少し高いように感じます。基本的には、最初にドクターのところへ行くところは一緒ですが、そこから理学療法士のところへ来た時にカルテが白紙のことが良くあります。つまり診断されていない状態です。そのため、理学療法士が診断を行い、治療を進めていくという流れになっています。

 

日本では理学療法士は診断することができないため、タンザニアのようにカルテに診断名を書くと、おそらく問題になってしまうでしょう。

 

しかし、タンザニアでは良く言えばドクターは理学療法士のことを信頼しており、悪く言えば丸投げしているような状態になっています。そこで理学療法士自身が診断し、カルテに記載する必要があります。

 

また、診断する際に問診のみでは判断が難しく、画像診断が必要であれば、レントゲンのオーダーも理学療法士が行います。それを見て診断をつけていくのですが、私が在籍するタンザニアの病院にはMRIやCTは無く、X線のみです。さらに、撮影技術も高いとはいえません。

 

また、資金不足のため、一枚のレントゲンにいくつもの写真が写されていることもあります。私はもともと画像診断を得意としていたわけでもなかったので、言い訳のようになってしまいますが、かなり見づらく判断しづらいものになっております。

 

しかし、タンザニア人スタッフは慣れたようすで画像診断を行っており、よほど画像が悪く無ければ再度撮影ということはありません。自分はまだまだ教わっている状況ですが、タンザニア人の診断レベルの高さがうかがえます。

 

 薬の処方も理学療法士が行う
また、日本と違う部分として、タンザニアでは理学療法士も薬の処方を行っています。痛みが強い場合や痛みに対して恐怖心が強い場合などは、リハビリとあわせて痛み止めなどの薬を利用するのが良いときがあります。おそらく日本ではそういった際にもいったんドクターの指示を仰ぎます。

 

しかし、タンザニアではその権限も理学療法士に任されております。そのため、患者さんによってはリハビリをほとんど行わず、問診や薬の処方、生活指導を行ってその日は終了という方もいらっしゃいます。

 

私は薬に関する細かい知識が全くないわけではありませんが、タンザニア人の理学療法士と比べると不足しているため、まだまだタンザニア人頼りになってしまっている状況です。

 

タンザニアでは大学のカリキュラムに薬学の授業があるそうです。新人スタッフの同僚が学生時代に配られた手作りの教科書を一生懸命に読んでいる姿を見ると、自分も頭が下がります。

 

あまり悪いことは書きたくないのですが、医師に関しては「勉強量が少ないのでは?」と感じてしまうことが時々あります。カルテが白紙なのも、おそらくよくわからないから理学療法士に任せた方が良いと判断したのだと思います。

 

また、レントゲン写真で明らかな骨折があっても見逃されてしまうことがあり、理学療法士がカルテに骨折の診断を追加することも時折あります。

 

もちろん、すべてのドクターではないだろうし、日本でも多少の診断ミスが無いことはないかと思います。しかし、日本と比べると医療レベルが低いと感じてしまわざるを得ません。

 

その分、理学療法士はドクターを頼りにするというよりも、「自分たちがしっかり診なくては!」という意識を感じます。

 

自分が日本で働いているころ、何かあったらとりあえず医師に診てもらおうと考えて仕事をしていました。そのときを振り返ると、自分の甘さを痛感しています。ドクターに任せることで、自分で考える努力を怠っていたように感じます。

 

環境が違うので、日本に直結するとは言いませんが、ここで得られる物もたくさんあると感じています。理学療法士として、医療人として責任ある仕事が出来るように日々成長していきたいと思います。

 

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