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かつて粗悪品と呼ばれていたゾロ品:クレメジンとメルクメジンの違い

 

ジェネリック医薬品は良い点ばかりではありません。実際にはデメリットも存在しますが、「ジェネリック医薬品の問題点」に関してはほとんど知らされていないのが現状です。

 

そこで、ここでは敢えて「ジェネリック医薬品の問題点」に焦点を当てていきたいと思います。

 

 ゾロ品とは
現在ではジェネリック医薬品の品質はかなり改善されています。新薬メーカーに比べて製剤面などで技術力に差がある事は事実ですが、この差も少しずつ埋まってくるようになると思います。

 

今でこそジェネリック医薬品は市民権を得ていますが、それより前は「ゾロ品」と呼ばれていました。新薬の特許が切れた後にゾロゾロと発売されることから、ゾロ品という名前が付けられたのです。

 

そして、この時に発売されていたジェネリック医薬品の中には、本当の意味で「安かろう悪かろうの製品も多く存在していた」という事実があります。

 

例として、慢性腎不全の治療薬として発売されているクレメジンとそのジェネリック医薬品であるメルクメジン(現:球形吸着炭「マイラン」)を紹介します。

 

慢性腎不全患者では腎臓の機能が悪くなっています。腎臓は尿を作る器官ですが、腎臓の機能が悪くなっている腎不全患者では、尿の生成も難しくなっていることが分かります。

 

尿として毒素を体の外へ排泄する機能が弱くなっているため、体の毒素を外に排泄する必要が出てきます。そのために、重度の腎不全に陥ると体内の毒を外に出すために人工透析を行います。この時、体内に蓄積する毒素を軽減する薬としてクレメジンが使用されます。

 

クレメジンの正体は活性炭です。活性炭は脱臭や水質浄化などの目的で使用されますが、これは活性炭が「様々な化学物質を吸着する性質」をもつためです。

 

活性炭であるクレメジンも同じように化学物質を吸着する性質があります。私たちの腸内に存在する化学物質を吸着することで、毒素の蓄積を軽減するのです。

 

そして、ジェネリック医薬品品質情報検討会では「クレメジンとそのジェネリック医薬品であるメルクメジン(現:球形吸着炭「マイラン」)の違い」について指摘をしたことがあります。

 

 メルクメジンの問題点
活性炭が毒素を吸着するにしても、当然ながら投与量に対して効率よく化学物質を吸着しなければいけません。これを踏まえた上で比表面積を比べてみるとクレメジンの方が大きく、メルクメジンの比表面積はクレメジンの80%程度しかなかった事が報告されています。

 

また、実際に化学物質をどれだけ吸着するか調べた試験を国立医薬品食品衛生研究所が行いました。

 

その結果、ジェネリック医薬品であるメルクメジンはクレメジンに比べ、化学物質の吸着量がそれぞれインドキシル硫酸で約3割にまで、インドール酢酸で約1割にまで、トリプトファンでは約3割にまで落ちていることが示されています。

 

これらの報告を受けてインドキシル硫酸に対する吸着性の改善が行われましたが、その後の試験でもメルクメジンの吸着率は先発医薬品のクレメジンに比べて低いという結果が報告されています。

 

なお、2005年に開催された学会での発表では、先発医薬品からメルクメジンへ変更した患者さん13人のうち、9人の方でそれまでよりも早いペースで腎不全が進行していることが分かっています。

 

後で12人の患者さんを先発医薬品のクレメジンへ戻しましたが、これによって7人の患者さんで腎不全の悪化速度が改善されたという内容でした。

 

実際に臨床試験を行なっている訳ではないため、この結果だけを受けてジェネリック医薬品は先発医薬品と比べて効果が違うことを議論することはできません。効果を判定するためのデータ数も少ないです。しかし、本当に先発医薬品とジェネリック医薬品とで効果が同じかどうかを確かめるには更なる検討が必要になります。

 

特に今回の薬は経口薬として口から服用するにしても、腸から吸収されて血液中を巡る薬ではありません。あくまでも、消化管に存在する毒素を活性炭として取り除く薬です。

 

血液中の薬物濃度推移で効果の判定を行うことができないため、本当に同じ効果が得られるかどうかの判断が難しい医薬品です。

 

このように、血液中に含まれる薬物濃度で判断できない薬は他にもたくさんあります。

 

例えば、糖の吸収を遅らせることで「糖尿病による毒性」を抑えるベイスンやグルコバイという薬があります。この薬は腸の中にある酵素を阻害して作用を発揮する作用機序であり、そもそも体の中にほとんど吸収されません。

 

他にも胃粘膜を保護することによって胃潰瘍を治療するアルサルミンやアルロイドGという薬もあります。薬を飲んだ後、薬は食道を通って胃に到達します。この時に薬として作用を発揮するため、この種類の薬も同じように血液中の薬物濃度は重要視されません。

 

このように、必ずしも全ての薬が体内に吸収されて作用を発揮するわけではありません。ジェネリック医薬品は基本的に血液中の薬物濃度推移を確認して「同等」と評価されますが、これら体内への吸収が関係ない薬は本当に効果が同等であるか注意する必要があります。

 

※当然、ジェネリック医薬品でもオリジナルな医薬品と変わらないくらい素晴らしいものはあります。しかし、ジェネリック医薬品には「問題点」があることも忘れないでください。

 

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