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バイオシミラーとジェネリック医薬品との違い

 

「バイオシミラー(バイオ後続品)」とは「先発医薬品の特許が切れた後に発売されるバイオ医薬品」を指します。

 

先発医薬品の特許が切れた後に発売され、値段が安く設定されている医薬品であるため、バイオシミラー(バイオ後続品)とジェネリック医薬品は一見すると全く同じように思ってしまいます。

 

しかし、実際にはバイオシミラーとジェネリック医薬品には大きな違いがあります。

 

 バイオシミラー(バイオ後続品)とジェネリック医薬品
シミラーは日本語で「似ている」を意味しますが、その通りバイオシミラーは先発医薬品と似ている薬になります。

 

ジェネリック医薬品も先発医薬品を比べた時、有効成分自体は完全に同じ成分が使われています。ただし、バイオシミラーでは有効成分は全く同じではなく、あくまでも似ている成分となります。そもそも、バイオ医薬品の場合は全く同じである事を証明するのがとても難しいです。

 

低分子医薬品の場合、構造が簡単なので全く同じ成分であることを証明する事が出来ます。しかし、バイオ医薬品のように構造が複雑で大きい物質の場合、本当に同じであるかどうかを今の技術で確認するのが困難です。

 

バイオ医薬品を作成するときは細胞に対して遺伝子を組み込む必要があります。この遺伝子を組み込んだ細胞は世の中に唯一の物であるため、そもそも全く同じ細胞を作ることは不可能です。これらの理由もあり、別々の機関で作られたバイオ医薬品は厳密に言うと違うものと判断されます。

 

さらに、先発医薬品としてバイオ医薬品の特許が切れたとは言っても、医薬品の製造方法など全てが公開されている訳ではありません。

 

そのため、バイオシミラーとして値段の安いバイオ医薬品を作成する場合、製造方法などを含めて全て自前で開発して行かなければいけません。

 

いずれにしても、ジェネリック医薬品に比べて、バイオシミラーの開発は圧倒的に難しい事を認識できれば良いです。

 

 バイオシミラー(バイオ後続品)と試験
先に述べたような特性があるため、特許が切れた後に販売される医薬品とは言っても、バイオシミラーには「新薬を発売する時に準ずる試験」が必要になります。

 

バイオシミラーの承認時では試験管レベルでの効果や毒性を調べ、さらに臨床試験まで実施して先発医薬品に効果が類似している事を証明していきます。この時、不純物や混入汚染物質なども試験の対象となります。

 

医薬品の承認に関して、バイオシミラーは先発医薬品と同じような製品を作るのが難しく、かなり厳しい審査を受ける必要があります。ジェネリック医薬品では最大でも4種類の資料を提出すれば良いですが、バイオシミラーを発売する場合には臨床試験を含めて最大で20種類以上になります。

 

また、商品を発売して終わりではなく、バイオシミラーの場合は新薬と同じように発売後も製品の安全性について引き続き調査しなければいけません。このような点もジェネリック医薬品とは大きく異なります。

 

それでは、「なぜ厳しい試験を受けるのにわざわざバイオシミラーを作成するのか」と思う方もいると思います。

 

ジェネリック医薬品のように試験の大部分を省けるのであれば、医薬品の開発費を大幅に削減することができます。開発期間もかなり短くなります。しかし、バイオシミラーでは新薬開発ほどではないにしても厳しい審査を通らなければいけません。

 

製造工程が全て公開される訳ではないため、「どのようにすれば先発医薬品と似たバイオ医薬品を作成できるか」まで考える必要があります。ゼロから本格的にバイオシミラーの製造を考える場合、設備投資として生物培養を行うために100億円以上の投資が必要になります。

 

ジェネリック医薬品とは違い、製品発売後も安全性などの調査を続けなければいけません。そのため、ジェネリック医薬品に比べてはるかに開発費用と時間がかかってしまいます。

 

ジェネリック医薬品の開発費は1つの薬につき1億円程度ですが、バイオシミラーでは50~100億円になると言われています。開発期間に関しては、ジェネリック医薬品では約1年ですが、バイオシミラーでは5年程度とされています。

 

また、ジェネリック医薬品の場合、既に使用している先発医薬品からの切り替えが推奨されています。そのため、薬局の窓口に行くと「ジェネリック医薬品へ切り替えませんか」と薬剤師に聞かれることがあります。

 

バイオシミラーはどうかというと、医師が先発医薬品から切り替えること自体は問題ないとされています。これにより、医療費が大幅に軽減されます。

 

ただし、バイオシミラーでは市販後に行われる安全性などの調査において、医師の認識なく切替えること(代替といいます)や先発医薬品と交互に使用すること(混用といいます)は、副作用がどちらによるものかわからなくなってしまい、正確な副作用調査ができなくなってしまいます。そのため、基本的に避けることとされています。

 

バイオシミラーで開発費が高くて期間が長いとは言っても、新薬開発に比べればかなりましです。新薬開発では1つの医薬品開発に300億円以上の費用がかかり、10~20年の期間が必要とされています。

 

これに比べると、バイオシミラーでは大幅に開発費や期間を抑えることができます。既に発売されている先発医薬品との比較によって得られるデータから医薬品開発が可能であり、使い方や使用量なども決められています。

 

そのため、新薬開発に比べると開発リスクが少なくて済みます。開発成功率も圧倒的に高いです。

 

医薬品の売り上げ上位にバイオ医薬品がいくつも食い込んでいることから、値段の安いバイオシミラーは大きな需要が予想されます。そのため、ジェネリック医薬品に比べると大きなハードルが待ち構えてはいますが、これらバイオシミラーの開発に着目している企業は多いです。

 

 バイオシミラーの例
2009年に日本で初めてのバイオシミラーとしてヒト成長ホルモンが発売されました。

 

子供の時に身長が伸びるために、成長ホルモンが重要であることは有名です。この成長ホルモンの分泌が少なければ、低身長になってしまいます。そこで、外から成長ホルモンを補うことによって低身長を改善することができます。

 

このような成長ホルモンの不足によって起こる病気に対し、ヒト成長ホルモンが使用されます。ジェネリック医薬品に比べると発売されているバイオシミラーの数は大幅に少ないですが、日本でもバイオシミラーとして「値段の安いバイオ医薬品」が発売されているという事です。

 

また、腎臓の機能が悪化している腎不全患者では、赤血球が作られなくなることによって貧血を起こしてしまいます。このような病気を腎性貧血と呼びますが、この腎性貧血の治療にバイオ医薬品が使われます。それと同時に、バイオシミラーも発売されています。

 

他にも、抗がん剤を使用することによって免疫細胞が減ってしまいます。この免疫細胞を補うためにバイオ医薬品を使用しますが、この薬に対するバイオシミラーが2013年の5月から発売されています。これによって、日本で発売されているバイオシミラーがようやく3製品になりました。

 

このように発売されているバイオシミラーはジェネリック医薬品に比べて少ないですが、今後は増えていくことが予想されます。

 

ジェネリック医薬品の最大の利点は値段が安い事です。これによって、患者さんの経済的な負担を大幅に軽減することが出来ます。

 

ただし、先発医薬品自体の値段が低いとき、ジェネリック医薬品によるメリットが感じられない場合もあります。これに対して、バイオ医薬品の場合はほぼ例外なく値段が高いです。そのため、バイオシミラーによる金銭的メリットを感じやすいです。

 

実際に「値段の高さ」によってバイオ医薬品の使用を躊躇う人はかなり多いです。そのため、薬の効果や副作用などの安全性がきちんと確保されるのであれば、バイオシミラーはとても有用な薬になります。

 

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