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ずっと品薄のジェネリック医薬品:エパデール

 

ジェネリック医薬品は良い点ばかりではありません。実際にはデメリットも存在しますが、「ジェネリック医薬品の問題点」に関してはほとんど知らされていないのが現状です。

 

そこで、ここでは敢えて「ジェネリック医薬品の問題点」に焦点を当てていきたいと思います。

 

 ずっと品薄のジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品が存在していたとしても、先発医薬品からジェネリック医薬品へ変更できない事があります。この例として、薬局に在庫を置いていない場合があります。ただし、薬局側の在庫不足であれば、時間が経てば確実に薬を購入することができます。

 

しかし、中にはメーカー側の問題によって商品の供給が滞っている場合があります。この場合であると、どの薬局に行ってもジェネリック医薬品へ変更してもらう事が難しいです。

 

このような商品の例として、脂質異常症治療薬である先発医薬品「エパデール」があります。人によっては脂質異常症ではなく、高脂血症と言った方が分かりやすいかもしれません。

 

エパデールの正体はイコサペント酸エチルという成分であり、通称EPAと呼ばれます。サプリメントなどに「EPA配合」という文字が書かれていることがあります。まさにこのEPAが医薬品として販売されています。

 

EPAは魚の油として抽出したものです。このEPAには中性脂肪の値を下げる作用が認められています。医薬品であるエパデールはこのEPAが高純度に含まれており、これによって脂質代謝を改善します。前述の通り、単なるEPAは健康食品やサプリメントにも含まれています。

 

もともとは「アザラシを主食としていたグリーンランドのイヌイットを調査したところ、心臓病の発症割合が少なかった」という調査からEPAが注目され始めました。

 

このように高純度品のEPA製剤はエパデールという商品名で医薬品として使用されますが、その主成分が魚の油であることから副作用が少ないです。そのため中性脂肪を下げる脂質異常症の治療薬として多用される薬でもあります。

 

ただし、生活習慣病の薬に共通することですが、この医薬品は値段が高い薬です。そのため、ジェネリック医薬品に変えることで負担額を大きく軽減できる薬の一つとなります。

 

そのためにジェネリック医薬品へ変更する人も多いことが予想される薬ですが、実際には先発医薬品からジェネリック医薬品へ変える事が難しいです。

 

この理由として、前述の通りエパデールのジェネリック医薬品に関して、ジェネリックメーカーが長い間「品薄」の状態を引き起こしているからです。

 

しかも、数ヶ月単位での品薄ではありません。何年にも渡ってずっと品薄状態です。そのため、先発医薬品であるエパデールから新たにジェネリック医薬品へ変更することが難しいです。

 

問題なのは、理論的にはジェネリック医薬品が処方可能な事にあります。しかし、あくまでも理論的に可能なだけであり、現実には品薄状態のためにジェネリック医薬品を手に入れることが困難な状態です。

 

そのため、患者さんは戸惑ってしまいますし、薬剤師としても患者さんへの説明も難しいです。「品薄のため、メーカーから商品が届かない状態です」と説明してもなかなか納得してくれません。

 

下手をすれば一度ジェネリックへ変更した後に、もう一度先発医薬品へ戻したり他のジェネリック医薬品へ変更したりと何回も薬を変えなければいけません。

 

たとえ成分は同じであっても、服用する薬がコロコロと変わるのは望ましくありません。薬によって症状を上手くコントロール出来ていたとしても、販売メーカーを変えることによって副作用が強く表れてしまうことは実際にあります。効果が弱くなってしまうこともあります。

 

これを避けるために、医薬品は安定配給できることがとても重要になります。しかし、エパデールのジェネリック医薬品に関しては、何社ものジェネリックメーカーが何年にも渡って品薄状態を引き起こしています。もし品薄状態が解消されたとしても、いつ同じように品薄に陥るか分かりません。

 

これらの事実は医療関係者であれば当然のように知っていますが、一般の方には知らされていないジェネリック医薬品の問題点の一つです。

 

なお、今回紹介した脂質異常症治療薬エパデールですが、先発医薬品は品薄になっていません。

 

この薬の原料として使われるEPA製剤はイワシの油を抽出して利用していますが、天然由来の成分であることが一つの特徴となります。

 

この医薬品を供給するためには、まずはイワシの油を確保しなければいけません。

 

そこで新薬メーカーでは、高品質のイワシの油を確保するためにチリ、ペルーに現地法人を設立して安定供給に努めています。もしペルー沖でエルニーニョ現象が起こり、イワシの漁獲量が減ったとしても世界各地で魚油の備蓄を行なっています。

 

このようにして安定供給を行っていますが、ジェネリック医薬品ではこれが出来ていません。それどころか、何年も品薄状態を続けています。

 

医薬品メーカーである以上、薬を安定供給できることはとても重要になります。この安定供給に関しても、ジェネリック医薬品の大きな課題の一つとなります。

 

※当然、ジェネリック医薬品でもオリジナルな医薬品と変わらないくらい素晴らしいものはあります。しかし、ジェネリック医薬品には「問題点」があることも忘れないでください。

 

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