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役に立つ薬の情報~専門薬学

薬の不活性化と薬への耐性

 

薬は体にとって異物です。薬は薬としての効果が期待される状態、つまり活性があるときに作用します。しかし薬は体内に入ると不活性化され、その後消滅します。薬が作用しなくなるようにする機構をもつ理由ですが、体内に有害物質があると危険だからです。

 

自然界の食物には様々な化学物質が含まれています。その化学物質の中には有害物質も含まれています。これらの有害物質を無効にしなければいけません。これと同じ作用で薬も不活性化させられます。

 

この薬物の分解、排泄には肝臓と腎臓が大きく関わっています。この文章を読めばアルコール依存症の人がなぜ肝臓に大きなダメージを負っているかが分かると思います。

 

 肝臓の役割
肝臓には様々な酵素があり、外界からの化学物質を素早く解毒できるようになっています。また、肝臓には自然界には存在しない人工の薬まで分解する作用をもっています。

 

食物からの栄養は、腸から吸収されます。そして、腸からの血液はまず最初に肝臓に向かいます。つまり、食物からの化学物質が全身に行き渡る前に肝臓で解毒されます。これによって、害を最小限に抑えています。

 

 不活性化の悩み
薬が不活性化されるということは、薬の効果がなくなるということです。この問題は薬を創薬する上で重要な問題です。素早く代謝され不活性化される薬は、効果が少ししかありません。

 

素早く不活性化される薬の例に、重い痛みに使用するモルヒネがあります。このため、モルヒネを投与する場合は数時間おきに投与する必要があります。

 

なお、現在では少しずつ溶け出すことで、1日に何度も投与しなくてもいい方法が開発されています。

 

 酵素活性の重要性
肝臓は薬を分解する酵素をもっています。しかし、これらの酵素は人によって活性の強さが異なります。これは遺伝的に決まっています。

 

お酒に強い人と弱い人がいるのが良い例です。「日本人はお酒に弱い人が多い」ということは科学的に証明されています。これは、悪酔いの原因となる物質を分解する酵素の働きが弱かったり欠けていたりする人が、日本人に多いためです。

 

アルコール分解に関する酵素に限らず、酵素の働きの違いはとても重要です。この違いにより、人によって薬の効果や副作用の強さが異なってくるからです。遺伝子レベルの違いからその人に合う適切な薬や量を提供することができるようになります。

 

この遺伝情報の違いから個人個人に適切な薬の処方を目指す医療をオーダーメイド医療といいます。

 

 薬剤への耐性
慢性の病気では薬を長期間使用しつづけていると、体がその薬に対し耐性を形成してしまうことがあります。多くの場合、薬の耐性を形成するときは肝臓がその薬を分解する酵素の量を増やすからです。

 

これは重要な問題です。

 

薬Aを長期間投与し続けます。その結果、薬Aに対して耐性を形成してしまったとします。つまり、薬Aを分解する酵素の量が増えました。

 

もし、薬Bが薬Aと全く同じ酵素で分解されるとしたらどうなるでしょうか?

 

薬Aに耐性ができてしまいましたが、結果として薬Bの効果も薄れてしまうことになります。このように、薬の耐性は注意が必要となります。

 

アルコールをある程度摂取し続けると、アルコールを分解する酵素の活性が増え、結果として耐性ができることになります。つまり、お酒に弱い人でもアルコールの耐性が形成すれば、ある程度までは飲めるようになるかもしれません。もちろん、無理をするのはお勧めしません。

 

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