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役に立つ薬の情報~専門薬学

食物:抗生物質漬けの食肉

 

BSE問題などにより、食の安全に対する意識は徐々にではありますが高まってます。

 

食事はとても大切です。食事の内容によっては、生活習慣病などに直接関わるからです。病気を予防するため、毎日の食事によって摂取される栄養を考えないといけません。

 

食事内容も重要ですが、安全な食物を選ぶことも大切です。有機栽培など農薬を全く使用しない農作物が市場にでてくるようになりました。これは私達が食に対する安全性を訴えてきて、農家の人がそれに応えてくれたからです。

 

ここでは農作物ではなく食肉に焦点を当ててみたいと思います。BSE問題により肉骨粉が問題となりました。消費者で肉骨粉によって育てられた牛肉は買わないという人は多いと思います。

 

しかし、食肉にはほかにも多くの問題があります。その一つが成長促進剤であり、成長促進剤には抗生物質が含まれています。ここではその成長促進剤について述べたいと思います。

 

 成長促進剤
動物に飼料を与えるとき、成長促進剤を混ぜることがあります。

 

現在、成長促進剤はヨーロッパで禁止されています。WHOは「抗生物質を成長促進剤としての使用を禁止する」という方針を表明しています。しかし、まだ日本では抗生物質が含まれる成長促進剤を使用しています。

 

成長促進剤がなぜいけないかというと耐性菌の問題があるからです。抗生物質が効かない。つまり、病気になってもその病気が治らなくなります。これでは薬はもう薬でありません。

 

このような耐性菌が病院だけではなく農場からも検出された例が多くあります。これは動物が病気にかかったときに使用する抗生物質の影響もありますが、多くは成長促進剤に含まれる抗生物質の影響によるものと考えることができます。

 

飼料に含まれる抗生物質の量はごくわずかです。少ないから大丈夫ではないかと思うかもしれません。しかし、実際はこの量で十分耐性菌が発生します。

 

また、量が少ないので細菌を完全に殺すまでには至りません。つまり細菌は徐々に抗生物質に慣れていき、耐性を獲得することができる理想の状態となるのです。このようにして、農場からも世界で最も恐ろしい菌が検出されるようになりました。

 

 耐性菌への感染
私達は抗生物質漬けの肉を食べていることになります。

 

成長促進剤によって薬に対して耐性を獲得した細菌が発生します。つまり牛や豚、鶏は耐性菌を体のなかにもつようになります。耐性菌を保有する動物を食肉として加工すれば、その肉には必然的に耐性菌が含まれることになります。

 

耐性菌に汚染された食肉を食べると、耐性菌が私達の体の中に侵入してきます。すると、耐性菌に感染する確率は高くなります。実際に数%の人の糞便から耐性菌が発見されています。

 

耐性菌によって病気が発病し、どの抗生物質でも効果が表れないのであれば、多くの場合は諦めるしか方法はありません。

 

ヨーロッパでは抗生物質を成長促進剤として使用していませんが畜舎を清潔に保つことで衛生状態をよくし、適切な飼料を与えることで解決しています。

 

なお、耐性菌の多くは加熱によって殺すことができます。さらに健康な人にとって、耐性菌は感染力も弱く問題となりません。ただし、例外もあります。

 

 加熱での殺菌
「加熱をすれば菌は死滅するため、安心して食べることができる」、多くの人はそう考えるかもしれません。しかし、「安心」と「安全」は全く異なります。

 

「加熱によって安心して食べることができても、必ずしも安全に食べることができる」とは限りません。

 

多くの細菌は加熱によって死滅します。しかし、細菌によって産出される毒素は熱に強いため、熱では毒素を完全に取り除けないことがあります。これでは、どれだけ熱処理しても毒素によって結局は病気にかかってしまいます。

 

また、しっかりと加熱をしたにもかかわらず細菌に感染することがあります。生の状態の肉を調理し加熱をして安心した後、まな板をそのままの状態にしてほかの食材を調理したりそのまま手を洗わずにいたりすると細菌は体の中に入ってきます。

 

このように、「加熱して安心していること」と「安全に食べられること」は決してイコールではありません。

 

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