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役に立つ薬の情報~専門薬学

キックリン(ビキサロマー)の作用機序:リン吸着剤

 

体の中を流れるミネラルとしては鉄分やマグネシウムなどが有名ですが、このミネラルの1つとしてリンがあります。リンはカルシウムと共に骨の形成に関わる重要な要素です。

 

リンは食事中に含まれており、尿と一緒に排泄されます。この時、腎臓の機能が弱っている慢性腎不全患者では、尿の生成機能が弱くなっています。尿が作られなくなるため、体の中にリンが溜まって高リン血症を発症してしまいます。

 

そこで、慢性腎不全患者に対して高リン血症を改善するためにビキサロマー(商品名:キックリン)が使用されます。ビキサロマーはリン吸着剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 リン吸着剤と慢性腎不全による高リン血症の治療
骨の形成にはカルシウムとリンが必要になります。骨だけでなく血液中にもカルシウムとリンが含まれており、この時のカルシウムとリンには以下のような法則があります。

 

 カルシウム × リン = 一定

 

血液中のカルシウムとリンを掛け合わせたものを「カルシウム・リン積」と呼びます。高リン血症であるとカルシウム・リン積が高くなってしまいます。その結果、カルシウムが血液中に溶けきれなくなって外に追い出されてしまいます。

 

この時、カルシウムは関節や心臓、皮膚の下などに移行して沈着を起こすようになります。これによって、腫れや痛みを起こすようになります。

 

通常、カルシウムやリンは骨や歯にしか蓄積しません。しかし、高リン血症の患者さんではカルシウム・リン積の上昇が起こり、他の組織に沈着してしまいます。このような現象を異所性石灰化と呼びます。

 

慢性腎不全によって透析を行っている患者さんでは、カルシウム・リン積の上昇に伴って冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞など)による発症率や死亡率が上昇すると言われています。

 

また、腎臓は腸からのカルシウム吸収にも大きく関わっています。カルシウムが吸収されるためにはビタミンDが必要となりますが、ビタミンDの活性化に腎臓が関与しているためです。

 

慢性腎不全患者では腎臓の機能が落ちているため、ビタミンDの活性化が進みにくくなっています。そのため、カルシウム吸収の機能が弱くなっています。さらに、高リン血症によって血液中のカルシウムが関節などの組織に移行してしまうため、さらに血液中のカルシウムが減ってしまいます。

 

カルシウムは筋肉の収縮や記憶の形成など、重要な生理作用に関わっています。そこで、何とかして血液中のカルシウム濃度を上昇させようとします。この時に分泌されるホルモンとして副甲状腺ホルモン(PTH:パラトルモン)があります。

 

腎臓が悪くなったり、高リン血症を発症することによって副甲状腺の機能が亢進してしまうのです。

 

副甲状腺ホルモン(PTH)は骨からカルシウムを溶かすことで、血液中のカルシウム濃度を高めようとします。その結果、骨が脆くなって骨折しやすくなったり、異所性石灰化が加速したりします。

 

この状態を回避するため、また高リン血症を治療するためにビキサロマー(商品名:キックリン)が使用されます。

 

 

 ビキサロマー(商品名:キックリン)の特徴
リン吸着剤としての作用をもつ薬がビキサロマー(商品名:キックリン)であり、食事中に含まれるリンを吸着する働きがあります。ビキサロマーに吸着されたリンはそのまま糞便として排泄され、「食事中に含まれるリンが腸から吸収される過程」を抑制する作用があります。

 

 リン吸着剤の作用機序:慢性腎不全治療薬

 

ビキサロマーは膨潤(水などを吸収して膨らむ事)の程度が少ないとされています。そのため、胃腸障害などの副作用が軽微であると考えられています。

 

また、セベラマー(商品名:レナジェル、フォスブロック)で心配される代謝性アシドーシス(血液のphが酸性に傾いてしまうこと)の心配がないとされています。

 

さらに、ビキサロマーはカルシウムや金属を含みません。そのため、他のリン吸着剤にみられる「高カルシウム血症」や「金属蓄積による毒性の発生」などが起こらない事が期待されています。

 

他のリン吸着剤に比べて、このように副作用の回避を図った薬がビキサロマー(商品名:キックリン)です。

 

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