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役に立つ薬の情報~専門薬学

リクラスト(ゾレドロン酸)の作用機序:骨粗しょう症治療薬

 

骨がスカスカになって脆くなってしまう病気として、骨粗しょう症があります。骨粗しょう症では骨が弱くなってしまうため、骨折のリスクが高くなります。

 

お年寄りであれば、筋力が弱ることによって転倒することがあります。このとき骨が弱ければ、転倒したときに骨折してしまうことがあります。特に大腿骨(太ももの付け根)を骨折すると、その後寝たきりになってしまう恐れがあります。転倒というのは、寝たきりになる原因の上位を占めます。

 

そこで骨粗しょう症を治療するための薬として、ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)があります。ゾレドロン酸はビスホスホネート製剤(BP製剤)と呼ばれる種類の薬であり、年1回の投与で骨を強化する役割を果たします。

 

 

 ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)の作用機序
骨粗しょう症の薬の中でも、ビスホスホネート製剤(BP製剤)は多用されやすい薬です。これらの薬は、骨の代謝回転に働きかけることで骨粗しょう症の症状を改善させます。

 

まず、骨は常に代謝回転が繰り返されています。もっと分かりやすくいえば、「骨が壊される(骨吸収)」と「骨が作られる(骨形成)」が常に行われています。

 

私たちの細胞というのは、常に作り変えられています。臓器であっても、数年たてば別の細胞に入れ替えられるのです。これは骨も同様であり、常に「新しい骨が作られては壊され」を繰り返しているのです。

 

このとき、正常な状態であれば、「骨が壊される(骨吸収)」と「骨が作られる(骨形成)」のバランスが保たれています。一方で骨粗しょう症患者ではどうかというと、「骨が壊される(骨吸収)」の割合が多くなっており、「骨が作られる(骨形成)」の働きが弱くなっています。

 

 骨粗しょう症の状態:骨吸収と骨形成

 

このとき、骨を壊す過程(骨吸収)に関与している細胞として破骨細胞が存在します。破骨細胞が活動することによって、骨が脆くなっていきます。

 

そこで破骨細胞の働きを弱めることができれば、骨が壊されなくなるので骨を丈夫に保てるようになります。こうした働きをする薬がビスホスホネート製剤(BP製剤)です。

 

ビスホスホネート製剤(BP製剤)は破骨細胞に取り込まれ、破骨細胞の機能障害やアポトーシス(細胞死)を引き起こさせるのです。骨を壊す破骨細胞の働きが弱まるため、結果として骨が壊されなくなり、骨量が増えます。

 

 ビスホスホネート製剤(BP製剤)の作用機序

 

このような考えによって、破骨細胞の働きを阻害することによって骨が壊れないように調節する薬がゾレドロン酸(商品名:リクラスト)です。

 

 

 ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)の特徴
骨粗しょう症治療薬の中でも、ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)の最大の特徴は「年1回の投与で骨粗しょう症を治療できる」ことです。

 

それまで、月1回(4週間に1回)投与するタイプの薬は存在しましたが、年1回投与の骨粗しょう症治療薬として初めて登場したのがゾレドロン酸(商品名:リクラスト)です。

 

飲み薬ではなく、注射剤として投与します。15分以上の時間をかけて、点滴によって静脈内に投与 する薬です。

 

ビスホスホネート製剤は飲み方が決まっており、起床後の「お腹の中が空の状態」でコップ一杯の水と一緒に服用しなければいけません。他の食事と一緒に服用すると薬がうまく吸収されず、ミネラルウォーターと一緒に飲んでも薬の効果が出にくくなってしまうほどの薬です。

 

ただ、ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)のような注射剤であれば体の中へ直接投与するので薬の効果が出にくくなることはありません。年1回投与なので次回の投与日を忘れてしまう可能性はありますが、きちんと医師・薬剤師が確認できる仕組みになっていれば問題ありません。

 

 ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)の活用と副作用
なお、ゾレドロン酸はもともと「ゾメタ」という医薬品として販売されていました。この薬は「悪性腫瘍による高カルシウム血症」「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」の治療薬として、がん治療で用いられていたのです。

 

がん治療では「ゾメタ点滴静注4mg/100mL」で使用されていましたが、その量を増やして「リクラスト点滴静注液5mg」の商品名にて年1回投与の骨粗しょう症治療薬として開発したのがゾレドロン酸(商品名:リクラスト)です。

 

主な副作用としては、発熱、嘔気、けん怠感、頭痛、骨痛、関節痛低リン酸血症、低カリウム血症などが知られています。

 

なお、ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)は重大な副作用として腎機能障害を引き起こす恐れがあります。そのため15分以上かけて投与する必要がありますし、投与した後は腎機能悪化が見られないかの確認が必要です。

 

ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)はほとんど代謝を受けずに腎臓から排泄されるため、腎機能が悪化している患者さんでは慎重投与になります。

 

他にも、ビスホスホネート製剤(BP製剤)に共通する重大な副作用として顎骨壊死があります。要は、あごの骨が溶けてしまうのです。特に歯科医院で抜歯をするなどの予定がある方は、3ヵ月はビスホスホネート製剤を休薬するように指導されます。

 

そのため、同じようにゾレドロン酸(商品名:リクラスト)の使用前後3ヵ月は抜歯などの手術を控える必要があります。

 

ここで、他のビスホスホネート製剤(BP製剤)では月1回の服用などであるため、抜歯などの歯科治療を行うときは薬を休薬しなければいけません。一方、ゾレドロン酸(商品名:リクラスト)では年1回の投与であり、そうした休薬期間がないので、歯医者で抜歯するときであっても、期間を調節すれば薬をやめることなく継続することができます。

 

このような特徴により、年1回の注射剤として点滴静脈内投与し、骨粗しょう症を治療する薬がゾレドロン酸(商品名:リクラスト)です。

 

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