役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

役に立つ薬の情報~専門薬学

ロモソズマブの作用機序:骨粗しょう症治療薬

 

骨が脆くなってしまう病気として、骨粗しょう症があります。骨粗しょう症の患者さんでは、骨がスカスカになってしまうことによってつまずいたり咳き込んだりなど、ちょっとしたことで骨折してしまいます。

 

また、骨粗しょう症による骨折は寝たきり原因になる理由の上位です。足の付け根にある大腿骨(だいたいこつ)を骨折してしまうと、そのまま寝たきりになるリスクが高まるのです。

 

そこで、骨粗しょう症を治療するために投与される薬としてロモソズマブがあります。ロモソズマブは抗スクレロスチンモノクローナル抗体と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 なぜ、骨が脆くなるのか
そもそも、なぜ骨粗しょう症では骨がスカスカになるのでしょうか。これは、骨は常に代謝回転しているからです。つまり、新たに骨が作られたり壊されたりを繰り返しているのです。

 

私たちの細胞というのは、同じように見えますが分子レベルでは常に取り壊しと作り変えが行われています。例えば家であれば、新築の家は新品であっても時間経過と共に徐々に中身は汚れていきます。また、柱もボロボロになっていきます。

 

そこで、リフォームをするなどして強化すれば元の住みやすい状態を維持できるようになります。私たちの体もこれと同じであり、常に新陳代謝が行われているのです。

 

骨についても同様であり、骨が新たに作られ、それと同時に壊されているのです。このとき、骨が作られる過程を「骨形成」といいます。一方、骨が壊される過程を「骨吸収」といいます。

 

正常な人では、骨形成と骨吸収のバランスが保たれています。これにより、丈夫な骨が保たれます。一方、骨粗しょう症の人では、骨形成よりも骨吸収の割合が大きくなっています。つまり、骨が作られるよりも骨が壊される割合の方が大きいのです。そのため、時間経過と共に骨が脆くなっていきます。

 

 骨吸収と骨形成

 

骨粗しょう症を治療するとき、「骨形成を促進する(たくさん骨が作られるようにする)」または「骨吸収を阻害する(骨が壊される過程を阻害する」のどちらかです。

 

このうち、骨形成を促進させることで骨粗しょう症を治療する薬がロモソズマブです。

 

 ロモソズマブの作用機序
骨形成を行う細胞を骨芽細胞といいます。骨芽細胞が働くことによって、新たな骨が作られるようになるのです。そこで骨芽細胞を活性化させることができれば、それだけたくさん骨が作られるようになり、骨粗しょう症の症状を軽減できます。

 

私たちの体は骨が作られすぎないように制御されています。つまり、骨芽細胞を抑制するための物質が存在するのです。この物質をスクレロスチンといいます。スクレロスチンはタンパク質であり、骨芽細胞へ作用することでその働きを阻害します。

 

なぜ、骨形成を阻害する機能が存在するかというと、骨が作られすぎることによって不都合な症状を生じるようになるからです。生まれつき遺伝的に「骨形成が活発な体質の人」は骨折しにくくなりますが、その代わり関節が強直化して動かしにくくなります。その結果、さまざまな症状が引き起こされます。

 

こうした状態を回避するため、スクレロスチンという物質によって骨形成を抑制しているのです。

 

ただ、骨粗しょう症患者であれば骨がスカスカになっているため、骨量を増やした方が好都合です。このとき、スクレロスチンは骨芽細胞(骨を新たに作る細胞)の働きを抑制しているため、スクレロスチンの機能を阻害することができれば、結果として骨芽細胞が活性化されて骨量が増大するようになります。

 

 

 

このような考えにより、スクレロスチンを阻害することによって骨形成を促進する薬として開発されたのがロモソズマブです。

 

 

 ロモソズマブの特徴
特定の物質に結合することで、その働きを無効化する物質として抗体があります。私たちが感染症に罹ったとき、二度目に同じ感染症を発症しにくいのは抗体が既にできあがっているからです。

 

そこで、この働きを医薬品開発に応用したものがモノクローナル抗体です。遺伝子組み換え技術によって、人工的に特定の物質に結合する働きのある抗体を作り、薬として活用するのです。そこで、スクレロスチンを選択的に認識し、無効化する抗体医薬品がロモソズマブです。

 

スクレロスチンを阻害するモノクローナル抗体であるため、ロモソズマブは抗スクレロスチンモノクローナル抗体と呼ばれます。

 

なお、骨粗しょう症の治療薬では、骨吸収(骨が壊される過程)を阻害する薬がメインで活用されています。骨粗しょう症ではビスホスホネート製剤(BP製剤)と呼ばれる薬が多用されますが、これは骨吸収(骨が壊される過程)を抑制することで骨密度を上昇させます。

 

一方、ロモソズマブは骨芽細胞に働きかけることによって、骨が新たに作られる過程を促進するという異なる作用メカニズムをもつ薬です。

 

なお、抗体医薬品に共通しますがロモソズマブは非常に高価です。さらには注射薬であり、扱いにも注意が必要で飲み薬のように多くの患者さんに使用できるわけではありません。そのため、費用の面まで含めて使用を検討する必要があります。

 

このような特徴により、骨が壊される過程ではなく、骨が作られる過程を促進することで骨粗しょう症を治療する抗体医薬品がロモソズマブです。

 

スポンサードリンク




スポンサードリンク