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役に立つ薬の情報~専門薬学

ドボベット軟膏(カルシポトリオール、ベタメタゾン)の作用機序:尋常性乾癬治療薬

 

皮膚が角化していくことで、盛り上がったり赤くなったりする病気として乾癬(かんせん)が知られています。一般的な乾癬は尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)といわれます。

 

そこで、尋常性乾癬を治療するために用いられる薬がカルシポトリオール、ベタメタゾン(商品名:ドボベット軟膏)です。2つの有効成分を配合させた薬であり、カルシポトリオールはビタミンD3製剤、ベタメタゾンはステロイド剤と呼ばれます。なお、乾癬という名前ではありますが、他の人に移る伝染病ではありません。

 

 

 カルシポトリオール、ベタメタゾン(商品名:ドボベット軟膏)の作用機序
乾癬を発症した皮膚では、表皮細胞が異常な速度で作られるようになります。通常であれば、表皮細胞は約45日という周期で作られます。不要になった表皮細胞は垢として剥がれ落ちます。この垢として落ちる細胞を角化細胞といいます。

 

それに対して、乾癬では表皮細胞の周期が約4~5日とかなり短くなっています。そのため、通常よりも10倍の速度で代謝が行われます。

 

これだけ早く表皮細胞が作られるため、垢となる角化細胞が積み重なっていきます。これが、乾癬によって皮疹が起こるメカニズムです。

 

そこで、異常な表皮細胞の増殖を抑えて正常な状態へと導く必要があります。そのために使用される薬がビタミンD3製剤です。この成分がビタミンD受容体に結合すると、細胞の増殖を抑えたり分化誘導(正常細胞に誘導する作用)したりすることが知られています。

 

そこで、尋常性乾癬を治療するときはビタミンD3製剤を皮膚に塗ります。これにより、症状を抑えることができます。皮膚に生じる鱗屑や盛り上がりに対して、ビタミンD3製剤は有効です。

 

また、乾癬では炎症が問題になりやすいです。これは、「炎症を引き起こす物質」が放出されているからです。この物質をTNFαといいます。

 

TNFαはごく微量で強力に炎症を起こすことが知られています。そこで、TNFαの働きを阻害すれば、乾癬による紅斑などの症状を抑えることができます。そのために使用される薬がステロイド剤です。ステロイド剤はTNFαの作用を抑え、炎症を抑制します。

 

 ドボベット軟膏(カルシポトリオール、ベタメタゾン)の作用機序

 

このような考えにより、2つの薬の作用によって尋常性乾癬を治療へと導く薬がカルシポトリオール、ベタメタゾン(商品名:ドボベット軟膏)です。

 

 

 カルシポトリオール、ベタメタゾン(商品名:ドボベット軟膏)の特徴
尋常性乾癬の治療では、主に塗り薬が使用されます。このときの塗り薬としては、先に挙げたビタミンD3製剤とステロイド剤がメインです。そして、2つの薬を同時に塗る必要のある患者さんは多いです。

 

このような場合、例えばビタミンD3製剤を塗った後、時間をおいてステロイド剤を患部に塗る作業が必要です。つまり、1日に何度も全身に塗らないといけません。

 

そこで、薬局では2つの薬を混ぜ合わせることもしますが、このような調剤では一般的に薬の濃度に問題が表れやすいです。

 

これらの問題を解決するため、2つの塗り薬をあらかじめ配合させた薬としてカルシポトリオール、ベタメタゾン(商品名:ドボベット軟膏)が登場しました。従来の薬に比べて、利便性が優れている薬です。

 

このような特徴により、全身への塗布を1日1回をすむように工夫することで、乾癬をより効果的に治療する薬がカルシポトリオール、ベタメタゾン(商品名:ドボベット軟膏)です。

 

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