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役に立つ薬の情報~専門薬学

ガスコン(ジメチコン)の作用機序:消化管内ガス駆除薬

 

胃や腸などの消化管では、ガスの泡が発生していることがあります。泡がたくさんあると、お腹が張っているような感じを覚えたりイライラしたりします。

 

そこで、これらの気泡を解消させることで消化管の中に発生しているガスを速やかに排泄させる薬としてガスコン(一般名:ジメチコン)があります。ジメチコンは消泡剤と呼ばれる種類の薬です。ジメチコンはジメチルポリシロキサンといわれることもあります。

 

ガスコン(一般名:ジメチコン)の作用機序

 

ガスというのは、胃や腸などの消化管に溜まっているガスを指します。これらのガスが溜まると、ガスの圧力によってお腹まわりが圧迫されます。これが、先に挙げたような「お腹が張っている感じ」に繋がります。

 

これらのガスは消化管に存在する腸内細菌によって生み出されます。

 

私たちは栄養を取るために食事をします。食事は消化されて、腸から栄養として吸収されます。ただ、食物に含まれている栄養を利用するのは私たち人間だけではありません。消化管の中に存在する腸内細菌も同じように、食物に含まれている栄養を利用して活動します。

 

腸内細菌が活動して食物に含まれる栄養を分解すると、ガスが発生します。このときは「腸内細菌が気泡を生成して、その中にガスが溜まっている」という構造になっています。

 

この状態が蓄積すると、消化管内のガス圧が高まります。また、内視鏡やX線で検査しようとしても、気泡がたくさんあると上手く検査できません。そこで、何とかして気泡をつぶす必要があります。このとき着目したのが、「気泡の表面張力をなくす」という考え方です。

 

気泡を生じるのは、表面張力があるからです。そこで、表面張力をなくす物質を投与すれば、勝手に気泡を破裂させることが可能になります。

 

ガスコン(ジメチコン)の作用機序:消化管内ガス駆除薬

 

このような考えにより、表面張力を低下させることで消化管に溜まったガスを破裂させる薬がガスコン(一般名:ジメチコン)です。

 

ガスコン(一般名:ジメチコン)の特徴

 

工業用製品として多用されるものにシリコーンがあります。ガスコン(一般名:ジメチコン)はシリコーンの1種であり、強力な消泡作用を有する物質です。

 

気泡がはじけると、お腹の中にガスが遊離します。このときのガスは血液中に吸収されることがあれば、ゲップやおならとして口やお尻から出てくることもあります。いずれにしても、腸内に溜まっているガスの排泄を促すことができます。ガス自体を消去するわけではありません。

 

また、ガスが溜まることによる膨満感により、人によってはイライラを起こすことがあります。「頭が重い」「イライラする」「気分が沈む」など、何となく気分が悪い状態を不定愁訴(ふていしゅうそ)といいますが、ガスコンは胃腸からくる不定愁訴を改善します。

 

さらに、消化管の気泡をなくす作用があるため、内視鏡やX線検査を行うときは検査がしやすくなります。検査のときに使用する場合はガスコンのシロップ剤などが用いられ、下剤と一緒に服用することが多いです。これは、お腹の中をきれいにするためです。

 

シリコーンであるガスコンは腸から吸収されず、そのまま体外へと排泄されます。その作用も表面張力を低下させるだけであるため、副作用の少ない安全性の高い薬です。

 

このような特徴により、お腹の中にあるガスを除去することでお腹の張りを改善し、内視鏡やX線などによる検査を行いやすくさせる薬がガスコン(一般名:ジメチコン)です。

 

 

ガスコンの効能効果・用法用量

 

それでは、実際にガスコン(一般名:ジメチコン、英名dimethicone)を活用するときはどのように使用するのでしょうか。

 

ガスコンは胃腸管内のガスによる腹部症状(お腹の張り、腹痛、お腹がゴロゴロしている感覚)の改善に用います。その際、ガスコン錠40mgを1日3回、あるいはガスコン錠80mgを1日3回投与します。食後又は食間に用いることで効果を発揮します。

 

なお、年齢や症状によって量が増減することがあります。また、ガスコンは空腹時に服用することができます。

 

ガスコンは呑気症(どんきしょう:げっぷをすることができず、お腹に空気が溜まった状態の人)にも医師の判断で用いられることがあります。また、過敏性腸症候群に伴ってガスが溜まっているときにも用いられます。

 

それだけでなく、ガスコンは胃の内視鏡(胃カメラ)の検査前に用いられることもあります。患者さんは検査の前日から絶食し食事をとらないようにします。しかし、胃の中には空気の泡がまだ残っています。泡が内視鏡検査の妨げになることがあるので、ガスコンを使用します。

 

同じように、ガスコンは大腸の内視鏡検査(大腸カメラ)の検査前にも用いられることがあります。ニフレックやムーベンといった腸を綺麗にする下剤とあわせて、大腸ガスの泡を消して大腸の映像を見やすくするため用いられます。

 

内視鏡でガスコンを服用する際は、検査の15~40分前にガスコン錠40mg1錠か80mg1錠を約10mlの水と一緒に投与します。なお、年齢や症状によって量が増減することがあります。

 

さらに、ガスコンを胸・腹部レントゲン検査前に用いることがあります。胃カメラのときと同様、ガスを減らすことでより腹部のレントゲン写真の状態をよくして、判断しやすくするためです。

 

胸・腹部レントゲン検査前のガスコンは、検査3~4日前よりガスコン錠40mgを1日3回、あるいはガスコン錠80mgを1日3回投与します。食後または食間に使用できます。なお、年齢や症状によって量が増減することがあります。

 

症状によっては、散剤であるガスコン散10%(100mg/g)や、液剤のガスコンドロップ内用液2%(20mg/ml)の量を調整して用いることもあります。

 

ガスコン錠は一包化することができます。しかし、粉砕することは避け、もし粉砕が必要な場合は代わりに散剤や液剤を使用するよう推奨されています。

 

また、医師の指示でガスコンを放射線治療に使用することがあります。放射線治療のとき、腫瘍のある部位へ放射線を照射します。このとき、腸内のガスによって照射部位が動いてしまうことを防ぐためにガスコンが活用されます。

 

ガスコンの副作用

 

ガスコンは副作用の少ない薬です。頻度は非常に低いですが、報告されている副作用には、軟便、胃部不快感、下痢、腹痛、頭痛、食欲不振などがあります。ガスコンの影響で、むくみ、めまい、眠気などの症状は報告されていません。

 

ただし、ガスコンは腸内のガスを外に出していく薬なので、おならの出る回数が増えることがあります。

 

なお、ガスコンを長い期間毎日服用することはおすすめできません。一時的な対処としてガスコンを使用し、ガスを溜めないよう胃腸の環境を整える治療をすることが重要と考えられます。

 

ガスコンの併用禁忌と併用注意(飲み合わせ)

 

以前ガスコンを使用して、かゆみや発疹などのアレルギー症状が出た人は使用することができません。それを除き、ガスコンを服用できない禁忌の人はいません。

 

また、飲み合わせに注意が必要な併用注意の薬剤もありません。そのため、逆流性食道炎の人や緑内障の人、高血圧の人、肝臓や腎臓の機能が低下している人でも、ガスコンを使用することができます。ガスコンは、アルコールやヨーグルトとの影響もなく飲むことができます。

 

なお、以下の薬に関してもガスコンと併用することができます。

 

○整腸剤

 

ビオフェルミン・ラックビー(一般名:ビフィズス菌)、ミヤBM(一般名:酪酸菌)、ビオスリー(一般名:ラクトミン・酪酸菌・糖化菌)

 

○便秘薬

 

プルゼニド(一般名:センノシド)、マグミット・マグラックス(一般名:酸化マグネシウム)、マグコロール(一般名:クエン酸マグネシウム)

 

○胃や消化器の薬

 

セルベックス(一般名;テプレノン)、ムコスタ(一般名;レバミピド)、ガスロン(一般名:イルソグラジン)、ガスモチン(一般名:モサプリド)、ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)、プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)、タケプロン(一般名:ランソプラゾール)、パリエット(一般名:ラベプラゾール)、ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)、ガスター(一般名:ファモチジン)、コロネル・プリフル(一般名:ポリカルボフィルカルシウム)、セレキノン(一般名:トリメプチン)

 

○解熱鎮痛薬

 

ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)、バファリン(一般名:アスピリン)

 

その他にも、ガスコンは漢方薬の大建中湯や抗不安薬のデパス(一般名:エチゾラム)、精神科の薬や下痢止めとも併用することができます。

 

ガスコンの高齢者への使用

 

高齢者では代謝機能が落ちてしまいますが、ガスコンを使用することができます。場合によって、減量の検討が必要になることがあります。

 

ただ、肝機能や腎機能が落ちた方であっても、基本的に問題なく活用できます。

 

ガスコンの小児(子供)への使用

 

ガスコンには、ガスコン散10%(100mg/g)やガスコンドロップ内用液2%(20mg/ml)があります。子供に対しては、体重により量を調節するためにもこれらの散剤や内用液を活用していきます。

 

子供には、7歳6か月の子には1日60mg、12歳の子には80mgを1日3回に分け、食後または食間に使用します。体重や症状によって量が増減することがあります。

 

ガスコンの妊婦・授乳婦への使用

 

ガスコンは、妊娠中、授乳中の人にも問題なく服用できます。なぜなら、ガスコンは消化管から血液中へ移行しないので、胎児にも赤ちゃんにも影響がないと考えられるからです。

 

妊婦や授乳婦が薬を飲んで催奇形性などの影響が出るのは、薬を服用した後、腸から薬の成分が吸収されて全身へ作用するからです。ただ、ガスコンの場合は腸から吸収されず、腸管の中だけで作用する薬なので妊娠中であっても問題ないのです。

 

 

ガスコンの効果発現時間

 

ガスコン(一般名:ジメチコン)は消化管では代謝、吸収されず未変化体(肝臓での代謝を受けていない状態)のまま便とともに排出されます。

 

服用後、効き始めるまで15~40分ほどかかり、約3時間でガスが出てお腹の張りも解消するといわれています。また、試験によると6時間経つと薬の有効成分が半分以上消失するため、作用する時間は長くありません。つまり、ガスコンの半減期(薬の濃度が半分になる時間)も6時間と考えることができます。

 

ストマへ活用されるガスコン

 

ガスコンはストマの人に用いられることもあります。ストマとは、がんや、腸が閉塞することで便の通り道がなくなったときに作られる人工的な便の排泄口です。

 

代表的なものは人工肛門で、腸の一部や肛門を切除したときに、残った腸を用いて便の排泄口が作られます。このようなストマのひとが、お腹にガスがたまって苦しいときにガスコンを用いることもあります。

 

ガスコンの取り扱い

 

ガスコンは、子供の手の届かないところで直射日光や高温・多湿を避けて保管します。

 

ガスコンの後発医薬品

 

ガスコン(一般名:ジメチコン)は後発医薬品(ジェネリック医薬品)も発売されています。ガスコン自体は安価な薬ですが、さらに安く薬を手にすることができます。

 

ガスコンと市販薬

 

現在、ガスコンの主成分であるジメチコン(別名:ジメチルポリシロキサン)のみを含んだ市販薬はありません。

 

しかし、ジメチコンが他の整腸薬と配合された市販薬は複数存在します。そういった薬はガスコンと一緒に使ってはいけません。以下にジメチコン含有の市販薬の具体例を記します。

 

・ガスピタンa

 

(ラクトミン、ビフィズス菌、セルラーゼAP3、ジメチルポリキサン

 

ジメチルポリキサンに加えて、整腸剤や食物繊維を分解しガスの発生抑制をするセルラーゼが含まれていることがガスコンとガスピタンとの違いです。

 

・ザ・ガードコーワ整腸錠PC

 

(納豆菌末、ラクトミン、ジメチルポリキサン、センブリ末、ケイヒ末、ウイキョウ末、メチルメチオニンスルホニウムクロリド、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、パントテン酸カルシウム)

 

ザ・ガードコーワ整腸錠PCでは、ジメチルポリキサンに加えて「整腸作用や弱った胃の働きを助ける成分」「荒れた胃を保護する成分」などが含まれていることが、ガスコンとの違いです。

 

このように、少ない副作用でガスの溜まった症状に幅広く活用することができるのがガスコン(一般名:ジメチコン)です。

 

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