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ジャディアンス(エンパグリフロジン)の作用機序:糖尿病治療薬

 

腎症や網膜症、神経障害などの合併症を引き起こし、生活の質を低下させる病気として糖尿病が知られています。

 

糖尿病は血糖値(血液中に含まれる糖濃度)が高くなってしまう病気であり、患者数が多いことでも知られています。

 

そこで、血糖値を下げることで糖尿病を治療する薬としてエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)があります。エンパグリフロジンはSGLT2阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。

 

 

 糖と腎臓の関係性
糖尿病とは、その名の通り「尿から糖が検出される病気」です。糖と腎臓は大きく関わっており、腎臓の働きを理解することで、糖尿病治療薬の働きが見えてきます。

 

腎臓は尿を作ることで、体内の老廃物を排泄する役割を果たします。最初に尿が作られるとき、原尿にはアミノ酸や糖などの栄養素が含まれています。これらの栄養素は私たちの体内に必須であるため、そのまま尿と共に排泄されるのは不都合です。

 

これを回避するため、腎臓で作られた尿が尿管を通って膀胱まで輸送される間に、アミノ酸や糖などの栄養素は血液中へと移送されます。これを再吸収と呼びます。再吸収によって全ての糖が吸収されるため、通常は尿から糖が検出されることはありません。

 

 アミノ酸、糖、水分の再吸収

 

しかし、糖尿病患者は血糖値が高すぎるため、原尿に含まれる糖濃度が高くなることで糖の再吸収が追い付かなくなり、尿から糖が検出されるようになります。

 

 エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)の作用機序
糖尿病治療薬は血糖値を下げることで糖尿病を治療しようとします。糖は尿管を通っている間に再吸収されるため、この時の再吸収を抑えてしまえば、血糖値を下げることができるようになります。

 

尿管を細かく分けると、腎臓側から「近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管」となります。この中でも、近位尿細管には糖を認識して血液中へと移動させる輸送体が存在します。この輸送体をSGLT2と呼びます。近位尿細管に存在するSGLT2が糖吸収の約90%を担っているといわれています。

 

 SGLT2阻害薬の作用機序

 

SGLT2を阻害すれば、糖の再吸収が抑制されるために、尿中に含まれる糖分が多くなります。これによって、糖を体外へ積極的に排泄させることができるようになるため、血糖値が下がります。

 

このような考えにより、尿中から排泄される糖を多くすることで糖尿病を治療する薬がエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)です。SGLT2を阻害するため、SGLT2阻害薬と呼ばれます。

 

 

 エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)の特徴
多くの糖尿病治療薬はインスリンの働きを強めるように作用します。これは、血糖値を下げる唯一のホルモンがインスリンだからです。ただ、インスリンを強める薬には低血糖や体重増加などの副作用が知られています。

 

一方、エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)はインスリンに作用せず、糖の尿中排泄を促進させるというメカニズムです。そのために低血糖のリスクが少なく、体重増加を起こさないと考えられています。むしろ、体重減少の副作用が知られています。

 

ただし、低血糖を引き起こさないというわけではありません。インスリンの作用を強める他の糖尿病治療薬と併用すると、低血糖を起こすことがあります。

 

主な副作用としては、頻尿や低血糖、口渇、便秘が確認されています。また、尿中の糖濃度が増えるために尿路感染症が懸念されています。栄養素である糖が排泄されるため、栄養失調なども知られています。

 

このような特徴により、1日1回の投与によって糖の尿排泄を促進させて血糖値を下げる薬がエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)です。「尿から糖が検出される」ようにする薬であるため、まさに糖尿病にする薬でもあります。

 

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