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テモダール(テモゾロミド)の作用機序:抗がん剤

 

脳に腫瘍が形成されてしまう病気として脳腫瘍が知られています。腫瘍は良性と悪性に分けられますが、良性であれば手術によって完治します。一方、悪性であれば手術の他にも放射線治療や薬を用いた化学療法が行われます。

 

そこで、悪性の脳腫瘍を治療するために用いられる薬としてテモゾロミド(商品名:テモダール)があります。テモゾロミドはアルキル化剤と呼ばれる種類の薬になります。

 

 テモゾロミド(商品名:テモダール)の作用機序
脳や脊髄は神経で埋められています。これらの神経は神経細胞や神経線維と呼ばれますが、これら神経を支える「神経細胞以外の組織・細胞」を神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)と呼びます。グリア細胞と呼ばれることもあります。

 

そして、神経膠細胞に起こる腫瘍を総称して神経膠腫(グリオーマ )と呼びます。神経膠腫がいわゆる脳腫瘍のことです。

 

腫瘍を手術で取り除いたように見えたとしても、悪性腫瘍であれば、脳組織に残ったがん細胞が細胞分裂を行うことによって再発してしまいます。そこで、化学療法を用いた治療を施すことで再発を防止するのです。

 

正常細胞に比べて、がん細胞は増殖速度が異常に速いという特徴を備えています。そこで、分裂のスピードが速い細胞に毒性を与えることができれば、がん細胞を細胞死へと導くことができます。

 

細胞が分裂を行うためには、DNAの複製を行う必要があります。DNAには生命情報の全てが刻まれているため、DNAの複製ができなければ細胞分裂はストップしてしまいます。これに着目し、抗がん剤はDNA合成を阻害するように作用します。

 

DNAは二重らせん構造を取っていますが、ある種の抗がん剤は橋を架けるようにDNAへ結合します。これによってDNAをほどくことができなくなり、DNAの複製が阻害されます。このような反応を専門用語で架橋反応と呼びますが、架橋反応によって細胞分裂を抑制する抗がん剤をアルキル化剤と呼びます。

 

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このような考えにより、DNAへ直接結合することでDNA合成を抑制し、抗がん作用を示す薬がテモゾロミド(商品名:テモダール)です。

 

 

 テモゾロミド(商品名:テモダール)の特徴
脳の腫瘍である「悪性神経膠腫」に対して使用される薬がテモゾロミド(商品名:テモダール)です。経口投与によって抗がん作用を示します。

 

放射線治療を単独で行うよりも、テモゾロミド(商品名:テモダール)と放射線治療を組み合わせた方が生存率を有意に改善することが分かっています。ちなみに、テモゾロミド(商品名:テモダール)を単独で使用した場合、初回再発の悪性神経膠腫に対する腫瘍縮小効果は34%です。

 

細胞毒性を示す薬であるため、ほとんどの患者さんで副作用が表れます。主な副作用としては、リンパ球減少、好中球減少、白血球減少、血小板減少、便秘、悪心などがあります。

 

このような特徴により、細胞分裂を阻害することによって脳腫瘍を治療する抗がん剤がテモゾロミド(商品名:テモダール)です。

 

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