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グリベック(イマチニブ)の作用機序:慢性骨髄性白血病治療薬

 

白血病にもさまざまな種類がありますが、白血病の中でも慢性骨髄性白血病(CML)は全体の約2割を占めます。慢性骨髄性白血病は血液のがんであり、中年以降に多くみられる病気です。人種差なく誰でも発症する可能性のある病気です。

 

そこで、慢性骨髄性白血病を治療するために使用される薬としてイマチニブ(商品名:グリベック)があります。イマチニブはチロシンキナーゼ阻害薬と呼ばれる種類の薬になります。分子標的薬といわれることもあります。

 

 イマチニブ(商品名:グリベック)の作用機序
古くから使用されている抗がん剤は「細胞分裂の速い細胞をターゲットにする」という考えで行われていました。そのために細胞毒性が強く、薬による副作用も大きいという特徴がありました。

 

そこで、がん細胞だけに存在する機構を狙い撃ちすることでがんを治療しようとする薬が分子標的薬です。分子標的薬の中でも、チロシンキナーゼという言葉が重要になります。

 

チロシンキナーゼは、細胞増殖のシグナル伝達に関与する酵素です。細胞増殖に関わる酵素であるため、異常なチロシンキナーゼが作られてしまうと、無秩序に細胞が増殖していきます。つまり、チロシンキナーゼとがん細胞は密接に関わっているのです。

 

 チロシンキナーゼの作用

 

そこで、がん細胞だけに存在する異常なチロシンキナーゼを阻害すれば、がんの増殖を抑制できることが分かります。チロシンキナーゼは酵素であり、タンパク質です。

 

慢性骨髄性白血病では染色体の変異が起こっています。この染色体を専門用語でフィラデルフィア染色体と呼びます。

 

フィラデルフィア染色体が形成されると、この染色体にあるDNA情報を元にして異常なタンパク質が作られます。この異常なタンパク質をBcr-Ablと呼びます。このタンパク質が細胞内のシグナル伝達を促進させ、細胞増殖を活発にします。

 

慢性骨髄性白血病を治療するためには、フィラデルフィア染色体を元にして作られる異常なタンパク質(Bcr-Abl)を阻害すれば良いことが分かります。Bcr-Ablのチロシンキナーゼ作用を抑え、細胞増殖を引き起こすシグナル伝達を遮断するのです。

 

 グリベック(イマチニブ)の作用機序:慢性骨髄性白血病治療薬

 

このような考えにより、慢性骨髄性白血病で問題となる異常なタンパク質の作用を抑え、病気を治療しようとする薬がイマチニブ(商品名:グリベック)です。

 

 

 イマチニブ(商品名:グリベック)の特徴
かつて、白血病は死の病気と考えられていました。実際、慢性骨髄性白血病を発症して治療を行わなければ、ほぼ確実に10年以内に死亡してしまいます。ただ、イマチニブ(商品名:グリベック)が開発されてからというもの、慢性骨髄性白血病の治療方法が一変しました。

 

イマチニブ(商品名:グリベック)を服用することにより、多くの患者さんが寛解(病気の症状が治まり、見かけ上の消失した状態)にまで導けるようになりました。つまり、白血病細胞がなくなり、治ったように見えるまで改善させることができるのです。

 

慢性骨髄性白血病患者に対して、イマチニブ(商品名:グリベック)を使用することで、生存率は投与7年目で86%に達したことが分かっています。イマチニブが開発される以前と比べると生存率が劇的に改善されています。

 

ただ、病気の症状が消失したとは言っても、病気から完全に立ち直ったわけではありません。イマチニブ(商品名:グリベック)の服用を止めると白血病を再発するため、薬は飲み続けなければなりません。

 

イマチニブは分子標的薬であるため、古くから使用されている抗がん剤のように髪の毛が抜けるなどの副作用はありません。その代わり、主な副作用として嘔気、好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症、発疹、貧血、嘔吐、眼瞼浮腫、筋痙攣などが知られています。

 

このような特徴により、慢性骨髄性白血病(CML)に対して大きな改善効果を示す薬がイマチニブ(商品名:グリベック)です。

 

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