フラジール(メトロニダゾール)の作用機序:抗原虫薬
微生物によって病気を生じることがあります。例えば、消化性潰瘍を引き起こすピロリ菌は細菌ですし、性感染症として知られているトリコモナス症はトリコモナスという原虫によって起こります。
そこで、これら細菌や原虫による感染症を治療するために使用される薬としてメトロニダゾール(商品名:フラジール)があります。メトロニダゾールは抗原虫薬と呼ばれる種類の薬になります。
メトロニダゾール(商品名:フラジール)の作用機序
感染症は病原微生物によって起こります。そのため、感染症を治療するためには、病気を引き起こしている細菌や原虫を排除すれば良いことが分かります。そのために重要な機構は免疫ですが、免疫の働きだけでは病原菌を排除できないことがあります。
このようなとき、抗菌薬を使用します。これらの薬の共通点としては、「病原菌には大きな毒性を示すが、ヒトへの作用は少ない」ことが挙げられます。
メトロニダゾール(商品名:フラジール)であれば、この薬を投与すると病原微生物の中に取り込まれます。その後、メトロニダゾールは還元されます。つまり、薬の形が変えられます。これにより、ニトロソ化合物(R-NO)が生成されます。
ニトロソ化合物には、DNAを切断する作用が知られています。DNAはすべての生命情報が刻まれているため、DNAがなければ生命活動を行うことができません。
そのため、メトロニダゾール(商品名:フラジール)には、細菌や原虫のDNAを切断して殺す作用が知られています。これにより、感染症を治療できます。
このような考えにより、遺伝子に働きかけることで殺菌作用を示す薬がメトロニダゾール(商品名:フラジール)です。細菌と原虫による感染症に対して、メトロニダゾールは有効です。
メトロニダゾール(商品名:フラジール)の特徴
原虫では、冒頭に述べたようなトリコモナス症に対してメトロニダゾール(商品名:フラジール)が使用されます。トリコモナスは原虫であるため、これを駆除するメトロニダゾールは抗原虫薬と呼ばれます。
また、メトロニダゾール(商品名:フラジール)は嫌気性菌(空気を嫌う細菌)に対して広く用いられます。現在では、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)やアメーバ赤痢を排除するために使用されることもあります。ただし、嫌気性菌ではないグラム陽性菌やグラム陰性菌に対しては効果がありません。
なお、メトロニダゾールは薬の吸収にも優れており、飲み薬として投与した場合はほぼ100%吸収されます。そのため、腸が正常である場合は、静脈注射でも経口投与でもほぼ同じ効果を期待できます。
このような特徴をもつメトロニダゾール(商品名:フラジール)は、耐性を獲得されにくいという性質も有しています。現在は、抗菌薬を投与しても効果のない耐性菌が蔓延しています。ただ、メトロニダゾールでは耐性化するまでいくつかのステップを踏まなければいけません。そのため、耐性菌が出現しにくいのです。
ただ、メトロニダゾール(商品名:フラジール)はアルコールの代謝に関わる酵素を阻害する作用が知られています。そのため、飲酒によってアルコールを摂取すると、ひどい悪酔いを引き起こすようになります。そのため、この薬を服用している間は飲酒を控える必要があります。
さらに、妊婦もメトロニダゾール(商品名:フラジール)の使用を避けるようにとされています。これは、催奇形性(胎児に奇形をもたらす作用)が疑われているからです。
このような特徴により、細菌や原虫に対して優れた効果を有するものの、アルコールを控えたり妊婦への投与を控えたりするなどの注意点も存在する薬がメトロニダゾール(商品名:フラジール)です。
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