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役に立つ薬の情報~専門薬学

自律神経(交感神経と副交感神経)の働きと役割

 

末梢神経は「自分の意思で動かすことが可能である体性神経」と「自分の意思ではコントロールが不可能である自律神経」の二つに分けることができます。

 

この中でも、自律神経はさらに交感神経と副交感神経の二つに分けられます。つまり、自律神経は二つの異なる神経系によって支配されています。

 

なお、交感神経と副交感神経は「それぞれ反対の働きをする」と考えれば良いです。

 

交感神経と副交感神経の働き

 

それでは、交感神経と副交感神経の働きについて以下で確認していきます。まずは交感神経についてです。

 

交感神経

 

運動をしている時、私たちは興奮している状態となります。この時、心臓の拍動数は早くなり、汗が分泌されるようになります。

 

このように、体を活発に活動させる時に働く神経が交感神経です。交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれています。

 

闘争として相手と戦う時、体は緊張して心臓の鼓動は早くなり、血圧が上がります。相手をよく見るために瞳孔は散大し、呼吸は激しくなります。同じように、自分を狙う相手から本気で逃げる時も体は興奮した状態となります。

 

体が活発に活動している時を想像すれば、交感神経が興奮した時の働きを容易に想像することができます。

 

交感神経(α受容体とβ受容体)

 

交感神経を興奮させる神経伝達物質として、アドレナリンやノルアドレナリンがあります。これらのシグナルが受容体に作用することで、血圧が上昇して瞳孔は散大します。

 

アドレナリンやノルアドレナリンが作用する受容体としてα受容体β受容体があります。ただし、これらを厳密に理解する必要はありません。

 

「アドレナリンやノルアドレナリンがα受容体やβ受容体に作用することで、運動時のような興奮状態となる」という事が理解できれば良いです。

 

副交感神経

 

「副交感神経は交感神経の逆の働きをする」と考えれば良いです。交感神経は運動時などの興奮した時に活発となるのに対して、副交感神経は体がゆったりとしている時に強く働きます。

 

例えば、食事中は気分を落ち着かせて食べるのが基本です。睡眠中も同じように体を休めている状態です。このように、食事中や睡眠時など体を落ち着かせている時に強く働く神経が副交感神経です。

 

これら体を休めている時の状態を想像すれば、副交感神経がどのような働きをするかを容易に理解することができます。

 

例えば食事をしている時、胃酸がたくさん分泌されて腸の運動は活発になります。副交感神経が興奮することにより、食物の消化に関わる機能が活発になります。また、副交感神経は交感神経と逆の働きをするため、心臓の機能は抑制されます。

 

副交感神経とムスカリン受容体

 

副交感神経は神経伝達物質の一つであるアセチルコリンによって興奮します。このとき、アセチルコリンが作用する受容体をムスカリン受容体と呼びます。

 

副交感神経が興奮するには、アセチルコリンによってムスカリン受容体を刺激する必要があります。

 

交感神経と副交感神経の違い

 

神経系の種類

機能・働き

交感神経

・アドレナリン、ノルアドレナリンが作用する
・運動時など、体が興奮している時に働く

副交感神経

・アセチルコリンが作用する
・食事中や睡眠時など、体がゆったりとしている時に働く

 

自律神経(交感神経と副交感神経)に作用する薬

 

自律神経を学ぶことで、多くの薬を理解することができます。この表を下に示しますが、一見とても複雑のように思えます。

 

しかし、実は当たり前の事を書いている表であることを理解することもできます。

 

交感神経

器官

副交感神経

散大

瞳孔

縮小

分泌

唾液

分泌

拡張

気管支

収縮

収縮

末梢血管

拡張

亢進

心機能

抑制(拍動数減少)

抑制

消化管運動

亢進

分泌抑制

胃液・膵液

分泌増加

排尿を妨げる

膀胱(排尿)

排尿促進

 

前述の通り、交感神経興奮は運動時など体を活発に動かしているときを想像してもらえば良いです。このとき心臓の鼓動は早くなり、消化管の機能は抑制され、唾液は粘っこくなります。

 

それに対し、食事をしている時など副交感神経は体を休めている場面を想像すれば良いです。体を休めているので心臓の鼓動はゆっくりで、食事の時は胃や腸などの消化管運動が活発になり、唾液は比較的サラサラなものとなります。

 

自律神経に作用する薬

 

自律神経の作用を理解すれば、多くの薬の作用機序を理解することができます。以下に、自律神経に作用する薬の例を示しています。

 

自律神経に作用する薬(交感神経と副交感神経)

 

例えば交感神経であれば、α受容体やβ受容体に作用して交感神経を興奮させれば気管支拡張や血管収縮などの作用を得ることができます。

 

他にも食事中など副交感神経が興奮している時は胃や腸などの運動が活発になっています。つまり、副交感神経を刺激する薬を投与すれば消化器系(胃や腸など)の機能を改善できることが分かります。

 

その反対に交感神経を抑制するように働けば、心臓の機能は抑制されて血管は拡張することが分かります。これらの作用によって、病気を治療することが可能となります。

 

このように、自律神経を理解することで薬に関しても応用することができます。

 

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