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ピロリ菌の特徴と発見の歴史、除菌方法

 

胃酸の正体は強い酸である塩酸であることから、長い間、強酸性条件の胃に細菌が住み着くことはできないと考えられていました。しかし、1982年に胃の中からピロリ菌が発見され、それまでの常識が覆されました。

 

ピロリ菌の発見は、それまでの考えを覆すほどのものでした。このときの発見は偶然も重なり、運よくピロリ菌を培養することができたのです。

 

ピロリ菌の特徴

 

ピロリ菌は胃の中の強い酸性条件下で生息することができる細菌です。ピロリ菌であっても胃酸には勝てないため、ピロリ菌は胃酸に触れないように胃粘膜の中に潜り込んで生息します。

 

また、ピロリ菌は粘液中の尿素を分解してアンモニアを作ることで胃酸を中和し、自身を守っています。

 

塩酸は酸性ですが、アンモニアはアルカリ性なのでこの二つが合わさると中性になります。ピロリ菌はウレアーゼという酵素によって尿素からアンモニアを産生しますが、このようなピロリ菌の性質を「ウレアーゼ活性を持つ」と表現します。

 

胃粘膜に住み着いているだけならいいのですが、ピロリ菌は潰瘍を引き起こす原因となります。ピロリ菌が作り出すアンモニアは粘液層を溶かすことで、粘膜を傷つけます。また、ピロリ菌はサイトトキシンという毒素を放出します。

 

これによっても粘膜に傷がつき、炎症を引き起こします。

 

さらに、ピロリ菌に対して免疫反応が起こることで白血球が活性酸素などの化学物質を放出します。この活性酸素によっても粘膜が破壊されてしまい、潰瘍を発症しやすくなる下地が作られます。

 

この状態にさらにストレスやアルコールなどの悪影響が加わると攻撃因子と防御因子のバランスが容易に崩れてしまいます。これによって胃酸などの攻撃因子が胃粘膜を攻撃し、潰瘍が発生します。

 

ピロリ菌の特徴

 

このピロリ菌への感染は、口を介する経口感染によって起こります。

 

大人になってからの感染はまれであり、多くは発症しても自然に治癒します。感染するのは免疫がまだしっかりしていない幼児期であり、汚染された水や食べ物などによって感染すると考えられています。

 

ただし、「ピロリ菌に感染=消化性潰瘍」という訳ではありません。ピロリ菌に感染している人の中で消化性潰瘍を発症するのは全体の約2~3%であるといわれています。

 

ピロリ菌による潰瘍の発生メカニズム

 

これらの人はピロリ菌によって粘膜表面に炎症が起こってはいますが、潰瘍の症状も無くピロリ菌と共に過ごすことになります。

 

ピロリ菌発見の歴史

 

2005年のノーベル医学・生理学賞の受賞者がまさにこのピロリ菌の発見者です。当時、「強い酸性ではいかなる生物も生存できない」ということが常識でした。この常識を覆したのがピロリ菌の発見です。

 

消化性潰瘍治療薬の発見によって、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を治療できるようになりました。

 

しかし、以前は胃潰瘍を治療したにもかかわらず、たびたび胃潰瘍を再発することがありました。当時の研究者たちはこの原因が全く分かりませんでした。

 

そして、その後の研究によって潰瘍が再発する原因がこのピロリ菌によるものと判明しました。ピロリ菌はアンモニアを生成する酵素により、胃の強い酸性条件下でも生存できるように進化してきました。この菌の毒素により胃潰瘍が誘発されます。

 

「潰瘍の原因にピロリ菌の存在がある」という事を証明するためには、ピロリ菌を培養・増殖させる必要があります。そして、1983年にウォーレンとマーシャルはピロリ菌の培養に成功しました。

 

ピロリ菌は通常の細菌よりも成長が遅い菌であったため、培養がうまくいきませんでした。失敗が続いていた時、ちょうどピロリ菌培養の途中でイースター(復活祭)休暇がはさまり、通常48時間で終わらせる培養を5日間放っていました。

 

すると、培地にコロニー(菌のかたまり)ができており、細菌が増殖していることが分かりました。これによってピロリ菌が発見されました。

 

後から分かったのですが、ピロリ菌の培養には最低でも4日以上もの日数が必要だったのです。

 

 

ピロリ菌発見者のウォーレンとマーシャルのうち、マーシャルはピロリ菌を自ら飲んで急性胃炎が起こることを確認しました。当時、潰瘍の原因はストレスであることが主流だったので、「潰瘍が細菌によって発症する」という考えは画期的でした。

 

その後、ピロリ菌は抗菌薬によって除菌できることも確認されました。そのため、ピロリ菌による潰瘍を治すには「ピロリ菌を殺す抗菌薬」と酸性条件を緩和する「胃酸の分泌抑制薬」が必要となります。

 

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌

 

消化性潰瘍が起こる原因の一つとしてピロリ菌の存在があり、ピロリ菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍を再発させます。潰瘍を治療してもピロリ菌が存在する限りは炎症が続き、潰瘍が再燃しやすい環境が持続します。

 

ピロリ菌は除菌することが可能であり、ピロリ菌の除菌によって潰瘍の再発を大幅に抑えられることが分かっています。

 

ピロリ菌が除菌できていない状態であると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発率は約50~60%になります。除菌が完了した場合であると、再発率を2~3%程度にまで減らすことができます。

 

ピロリ菌の除菌のステップ

 

ピロリ菌の除菌は以下のようなステップをたどります。

 

ピロリ菌除菌のステップ

 

ピロリ菌の除菌は三剤併用療法で行います。このとき併用する薬剤として「プロトンポンプ阻害薬 + 二種類の抗生物質」を使用します。

 

具体的には、「プロトンポンプ阻害薬+ アモキシシリン(ペニシリン系抗生物質) + クラリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)」によるピロリ菌除菌の一次療法として、三剤を七日間服用します。

 

これによって、約80%の患者さんはピロリ菌を除菌することができます。

 

ピロリ菌の一次除菌と二次除菌

 

これら一次除菌に必要な医薬品をセットにした商品としてランサップがあります。  一次除菌に失敗すると、二次除菌を行います。

 

二次除菌としてはクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えて「プロトンポンプ阻害薬(PPI) + アモキシシリン(ペニシリン系抗生物質) + メトロニダゾール(抗原虫薬)」の併用療法を行います。

 

プロトンポンプ阻害薬としてはオメプラール(一般名:オメプラゾール)、タケプロン(一般名:ランソプラゾール)、パリエット(一般名:ラベプラゾール)、ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)などが知られています。

 

二次除菌に必要な医薬品をセットにした商品としてはランピオンがあります。二次除菌にも失敗した場合は保険適応外として、自費によるさらなる治療を行います。

 

ピロリ菌の除菌にプロトンポンプ阻害薬を使用する理由としては、抗生物質の殺菌力を増大させることがあります。胃酸はその強い酸によって抗生物質の殺菌力を抑えてしまいます。プロトンポンプ阻害薬によって胃の中のpHを上げれば、抗生物質の殺菌力が上昇します。

 

実際、クラリスロマイシンはプロトンポンプ阻害薬によってpHを中性付近にまでにすると、その殺菌力は百倍以上にも上昇します。H2ブロッカーでは、「胃酸分泌抑制作用による抗生物質の抗菌力増大作用」が不十分であるため、プロトンポンプ阻害薬が使用されます。

 

なお、プロトンポンプ阻害薬(PPI)以外にも、より胃酸分泌を強力に抑えるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)として知られるタケキャブ(一般名:ボノプラザン)を活用することも多いです。

 

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