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役に立つ薬の情報~専門薬学

苓桂朮甘湯の効能:めまい、耳鳴り、頭痛、自律神経失調症

 

めまいや立ちくらみ、耳鳴り、動悸など、日々の生活の中で起こるこれらの症状に悩まされる方は多く存在します。これらの疾患が命に関わることは少ないものの、日常生活に悪影響がでます。そこで、めまいや立ちくらみを改善するために使用する薬として苓桂朮甘湯(りゅうけいじゅつかんとう)があります。

 

漢方では、水が体内に溜まって排泄されない状態を「水毒(すいどく)」といいます。水毒により、先に挙げためまい、立ちくらみ、耳鳴りなどの症状が表れます。苓桂朮甘湯には、体に停滞している余分な水分を排泄する働きがあります。これにより、症状を緩和させます。

 

また、水分が停滞することで頭痛(頭のふらふら感など)が起こり、精神症状に影響を及ぼすようになります。苓桂朮甘湯はこれらを改善するため、神経症やノイローゼ、自律神経失調症などにも使用されます。

 

 苓桂朮甘湯(りゅうけいじゅつかんとう)と体質
漢方薬では、その人の見た目や症状を重要視します。検査値だけではなく、患者さんの様子から「どの薬を使用するのか」を決定するのが漢方薬です。苓桂朮甘湯であれば、次のような人が有効です。

 

 ・虚弱な体質(虚証)
 ・めまい、ふらつき(立ちくらみ)がある
 ・ときにのぼせや動悸がある
 ・尿量が減少している

 

日ごろから体が弱く、低血圧で冷え性のある人に対して苓桂朮甘湯が適しています。このような人は、「天井がグルグルと回るような回転性のめまい」、「船に乗ったときのようなめまい」、「急に立ち上がったときに起こる起立性低血圧」などにも有効です。

 

なお、漢方の古典である「傷寒論(しょうかんろん)」や「金匱要略(きんきようりゃく)」に苓桂朮甘湯が記載されています。2つはどちらも漢方の原点ともいえる古典です。

 

 苓桂朮甘湯の作用
体内の水分を取り去ることで症状を緩和させる苓桂朮甘湯には、生薬(しょうやく)と呼ばれる天然由来の成分が含まれています。これら生薬としては、以下の4種類が配合されています。

 

 ・茯苓(ぶくりょう)
 ・蒼朮(そうじゅつ)
 ・桂皮(けいひ)
 ・甘草(かんぞう)

 

茯苓(ぶくりょう)と蒼朮(そうじゅつ)には、水分の代謝を改善することで排泄を促す作用があります。これにより、めまいや立ちくらみを抑えます。また、桂皮(けいひ)は頭痛やのぼせを和らげ、神経興奮を抑えることが知られています。このような作用を有する生薬を組み合わせるのです。

 

水毒の状態では、冷えやめまい、頭痛、耳鳴り、むくみ、疲労感などの症状が表れます。これらの症状が、神経症やノイローゼ、自律神経失調症へと発展することもあります。

 

水毒の人の場合、ミネラルウォーターを飲むなど、水分の取り過ぎは好ましくありません。それよりも、余分な水分を外に出させるようにする必要があります。そのために、苓桂朮甘湯を活用します。

 

なお、構成成分である4種類の生薬名(茯苓、蒼朮、桂皮、甘草)を取って、苓桂朮甘湯と呼ばれています。

 

 苓桂朮甘湯の使用方法
苓桂朮甘湯を投与するとき、成人では「1日7.5gを2~3回に分けて、食前または食間に経口投与する」とされています。食間とは、食事中という意味ではなく、食事と食事の間を意味します。つまり、食後から2時間経過した、胃の中が空の状態を指します。

 

これら苓桂朮甘湯としては、

 

 ・めまい、ふらつき(立ちくらみ)
 ・耳鳴り、動悸、息切れ、頭痛
 ・神経質、ノイローゼ
 ・自律神経失調症

 

などの症状に有効です。水毒の原因には、水分代謝や胃の調子が悪いことなどが関係しています。そこで、これらの状態を改善することで諸症状を緩和するのです。

 

このような特徴により、虚弱な体質でめまいやふらつきのある方に対して使用され、耳鳴りや動悸、頭痛だけでなく、神経症や自律神経失調症にまで応用される漢方薬が苓桂朮甘湯です。

 

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