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役に立つ薬の情報~専門薬学

がんの特徴・転移・染色体異常

 

 がんの特徴
がんの特徴として「無秩序で急激な増殖」を挙げる人いると思う。しかし、がん細胞の増殖速度自体が必ずしも速いというわけではない。ただがん細胞は増殖が止まらずに、どんどん増殖し続けていくということである。増殖速度自体はそこまで変わらないのである。

 

がん細胞には次のような現象が起こっている

 

・トランスフォーメーション
・細胞骨格の異常
・糖鎖不全現象
・接触阻止の消失

 

・形質転換(トランスフォーメーション)
がん細胞では細胞の形質が変わっている。通常の細胞では多角形であるが、がん細胞では球形・紡錘形をしている。

 

 形質転換(トランスフォーメーション)

 

・細胞骨格
細胞骨格には中間径フィラメント(中間径繊維)、微小管、微小繊維の3つがある。微小管はチューブリン(タンパク質)から成り、微小繊維はアクチンが主成分である。

 

がん細胞では、このような細胞骨格が乱れている。

 

・糖鎖不全現象
がん細胞の糖鎖は、「通常の細胞の糖鎖よりも短いものが多い」など不完全な糖鎖が発現している。これが糖鎖不全現象である。糖鎖不全現象が起こるのは、膜の脂質糖転移酵素の活性が低下しているからである。

 

また、糖鎖不全現象を起こした細胞では細胞間の結合が弱くなっている。つまり、がん細胞はバラバラになりやすいのである。バラバラになりやすいので、正常細胞と比べてがん細胞が血流に乗って他の組織に移動する可能性が高い。そのため、転移しやすいのである。

 

また、がん細胞は血管内皮細胞の接着分子と結合するように変化している。がん細胞が血流に乗って移動しても、その組織に定着しなければ問題ないのだが、がん細胞は他の組織と定着できるように変化しているのである。つまり、転移を促進している。

 

・接触阻止の無効化
細胞が増殖していくとき、正常な細胞ではお互いに接触すると増殖を抑制しあう性質がある。これが細胞の接触阻止である。

 

しかし、細胞ががん化すると接触阻止されなくなる。つまり、細胞間同士の増殖抑制作用が無効となっているのである。

 

 接触阻止

 

 細胞同士の結合(細胞接着)
細胞は単独で存在しているわけではなく、お互いに接着して存在している(細胞接着)。細胞接着では細胞同士の結合の他に、細胞外マトリックス(結合繊維)との接着も含まれる。ただし、前者のみを細胞接着といい、後者を細胞-マトリックス接着という場合もある。

 

細胞接着の構造には次のような構造がある。

 

タイトジャンクション(tight junction:密着結合)
アドヘレンスジャンクション(adherens junction:接着帯)
デスモソーム(desmosome:接着班)
ギャップ結合(gap jundtion)

 

タイトジャンクションは物を通さない結合である。それに対し、アドヘレンスジャンクションやデスモソームは細胞間をつなぐ働きをする。ギャップ結合は細胞間での物質移動に関与している。

 

細胞同士をつなぐ働きをする分子をカドヘリンという。お互いにカドヘリンを介して結合しているのである。アドヘレンスジャンクションではカドヘリンの他にアクチンという物質が関与し、デスモソームでは中間径繊維が関与している。なお、がん細胞ではカドヘリンを介する結合が弱くなっている

 

 細胞接着

 

ギャップ結合では隣り合う細胞でイオンなどの分子を通過させる。ただし、通過できる分子はギャップ構造を通り抜けることのできる大きさの分子に限られる。

 

 細胞外マトリックス
細胞の間にはコラーゲンなど細胞間をうめる物質が存在する。このような細胞外にある成分を細胞外マトリックスという。

 

細胞同士はお互いに結合し合っているが、細胞外マトリックスが細胞同士を接着している場合もある。細胞同士の接着に関与するタンパク質にはフィブロネクチン、ラミニン、アクチンがある。

 

がん細胞ではフィブロネクチンが消失している。そのため、細胞同士の結合が弱くなっている。

 

また、がん細胞にはラミニンと結合する部分が多く発現してる。がん細胞が転移する場合は、ラミニンなどに結合して組織に定着するため、他の組織に定着しやすくなり、転移を促進している。

 

このように、がん細胞はフィブロネクチンの消失などで組織から離れやすくなっている一方で、ラミニン結合部位が多くなり他の組織に定着しやすく転移しやすい構造をとっている。

 

 がん細胞の染色体異常
正常細胞の場合、染色体は常染色体22対と性染色体1対の計23×2=46本である。しかし、がん細胞では染色体の数的な異常が起こる場合が多い。例えば、胃がん細胞では染色体数が75本の細胞が多い。

 

このようにがん細胞の染色体では数的異常が見られる。また、染色体異常には数的異常だけでなく形の異常(構造異常)もある。染色体構造異常には転座逆位などがある。

 

転座とはある染色体の一部が他の染色体に移ってしまう現象である。それに対し、逆位とは染色体のある部分の向きが逆になっている現象である。

 

 転座と逆位

 

構造異常は転座や逆位だけでなく、十字やループが起こっている場合もある。

 

 十字・ループ

 

疾患の中には特定の染色体の転座や逆位などが原因となっているものがある。例えば、慢性骨髄性白血病は第9染色体と第22染色体が相互転座している染色体が見られる。また、バーキットリンパ腫では第8染色体と第4染色体が相互転座している染色体が見られる。

 

慢性骨髄性白血病に見られる「第9染色体と第22染色体が相互転座している異常な染色体」を特にフィラデルフィア染色体という。

 

ただし、必ずしもがん細胞にこのような染色体異常が見られるとは限らない。

 

 網膜芽細胞腫
網膜芽細胞腫は小児に発症するがんである。網膜芽細胞腫には両眼性と方眼性がある。両眼性は主に遺伝子性であり、片眼性は主に非遺伝性である。

 

網膜芽細胞腫は染色体に欠損があるために起こる病気である。ただし、染色体はそれぞれ二本ずつ存在するので、失活するには二回のの変異が必要である。(ツーヒット仮説)

 

 ツーヒット仮説

 

そのため、生まれつき片方の染色体を欠損している家系のヒトは、がんが発生しやすくなっている。つまり、両眼性のヒトはもともと染色体が欠損している事が多いのである。

 

なお、「片眼性=非遺伝性」とは限らない。遺伝性の人でも片眼性の網膜芽細胞腫で済む場合もある。片眼の染色体欠損で済むか、両眼の染色体欠損を起こすかは確率的なものである。

 

 ヘテロ接合性の消失
ホモとヘテロであるが、「ホモ=同じもの、ヘテロ=違うもの」である。

 

遺伝性の網膜芽細胞腫のヒトのように、もともと遺伝的に片方の染色体(DNA)が欠損している場合、検出されるDNAの長さはそれぞれ違うはずである。これは染色体に損傷が起きて、どちらかの染色体が短く(or長く)なっているためである。このときの染色体は長さが違うのでヘテロ接合体である。

 

 ヘテロ接合性の消失

 

しかし、がん細胞では両方の染色体が欠損しているので、検出されるDNAの長さは同じである。長さが同じなのでホモ接合体である。

 

このように、染色体の欠損によってヘテロ接合体からホモ接合体に変化することをヘテロ接合性の消失という。このとき、がん細胞はホモであるが、がんの周りの細胞はヘテロである。(遺伝性のヒトの場合)

 

また、がん抑制遺伝子は相同染色体の片方が欠損しても機能を失わない。機能を失うのは両方の染色体が欠損する場合である。そのため、変異は劣勢である。

 

 マイクロサテライト不安定性
マイクロサテライトは2~4個の塩基の繰り返し配列のことである。マイクロサテライトの不安定性を調べることで、がんの指標となる。

 

マイクロサテライトの反復回数には個体差があるが、個人では同じである。しかし、リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)の患者では、マイクロサテライトの繰り返し配列が異常に変化している。

 

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