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役に立つ薬の情報~専門薬学

がんウイルス(がん遺伝子)

 

 ウイルスの特徴
ウイルスはDNAかRNAのどちらかをもっている。DNAやRNAには遺伝情報が載っている。この核酸の周りにはタンパク質の殻で包まれており、この外側にエンベロープ(被膜)をもつウイルスがいる。(エンベロープをもたないウイルスも存在する)

 

がんの発生にはウイルスが関与していることがあり、宿主に対してがんを誘発させる働きをするウイルスをがんウイルスという。

 

発がん性をもつがんウイルスには次のようなものがある。

 

・EBウイルス:バーキットリンパ腫(DNAウイルス)
・B型肝炎ウイルス:肝がん(DNAウイルス)
・C型肝炎ウイルス:肝がん(RNAウイルス)
・ヒトパピローマウイルス16,18型:子宮頸がん(DNAウイルス)
・ヒトT細胞白血病ウイルス:成人T細胞白血病(RNAウイルス)

 

この他にもがんウイルスは存在する。

 

 DNA型がんウイルス、RNA型がんウイルス
がんウイルスはDNA型がんウイルスとRNA型がんウイルスに大別することができる。なお、DNA型がんウイルスとRNA型がんウイルスでは細胞内で異なる挙動をする。

 

・RNA型がんウイルス
RNAがんウイルスの多くはレトロウイルスである。レトロウイルスとは逆転写酵素をもつウイルスのことであり、RNAからDNAを合成することができる。

 

 タンパク質合成までの流れ

 

レトロウイルスのRNAはmRNAであり、キャップ構造とpolyAテールをもつ。細胞内に入ると、自身のRNAから逆転写酵素を合成する。

 

この逆転写酵素によってRNAからcDNA(相補DNA)を合成する。次にcDNAを鋳型にしてもう一本のDNAを合成し、二本鎖DNAとなる。このDNAは宿主細胞のDNAに組み込まれる。つまり、レトロウイルスががん遺伝子をもっていた場合、宿主のDNAにがん遺伝子が組み込まれるということになる。

 

なお、レトロウイルスのゲノムにはtRNAが必ず含まれている。このtRNAはDNA合成のとき、プライマーとして働く。

 

ただし、tRNAに結合しているアミノ酸はウイルスによって違う。例えば、成人T細胞白血病ウイルスのtRNAはプロリンを含んでいるが、ラウス肉腫ウイルスのtRNAはトリプトファンを含んでいる。

 

・DNA型がんウイルス
DNA型がんウイルスが自然宿主細胞に感染すると、ウイルス増殖して最終的に細胞を破壊する。このとき、ウイルスはただ増殖するだけであるため宿主細胞はがん化しない。

 

しかし、DNA型がんウイルスが非自然宿主細胞に感染した場合は別である。非自然宿主細胞ではウイルスが増殖できない。このような状況のとき、ウイルスは自身のDNAを宿主のDNAに組み込んでしまう。このとき、宿主細胞はがん化する。

 

例えば、ヒトのみに感染増殖するDNA型がんウイルスがあるとする。このウイルスはヒトに感染すると活発に増殖しようとする。このとき、ヒトの細胞はがん化しない。

 

しかし、このウイルスがマウスなどのヒト以外に感染した場合は増殖することができない。このとき、ウイルスのDNAが宿主のDNAに組み込まれてしまい、がん化するのである。

 

 EBウイルスとバーキットリンパ腫
日本人の成人ではEBウイルスにほぼ100%の人が感染している。しかし、日本人がバーキットリンパ腫になることはほとんどなく、不顕性感染である。

 

バーキットリンパ腫になるにはその土地による影響が大きく、多くは中央アフリカの子供に発症する。バーキットリンパ腫が起こるにはプロモーターが必要であり、この地域には植物に発がんプロモーターが存在している。

 

また、免疫力の低下も発症の原因とされている。バーキットリンパ腫を多く発症している地域では、マラリアが流行している場合が多い。

 

 正常細胞に存在するがん遺伝子
がん遺伝子とは、細胞をがん化させる遺伝子のことである。実はウイルスだけががん遺伝子をもっているわけではなく、私たちの正常細胞もがん遺伝子をもっている。

 

ウイルス性がん遺伝子をv-onc(viral oncogene)といい、細胞性がん遺伝子をp-onc(proto-oncogene)または、c-onc(cellular oncogene)という。がん細胞に存在し、活性化されたp-oncをc-oncとして区別している。

 

また、同じ種類のウイルスでも生体をがん化させるウイルスとがん化させないウイルスがある。なぜなら、これらのがんウイルスがもつがん遺伝子はもともと生体内にあるがん遺伝子由来のものだからである。

 

がん遺伝子をもたないレトロウイルスを細胞に感染させたとする。細胞の中にはがん遺伝子があり、もしこの遺伝子をウイルスが取っきたとすると、回収されるウイルスはがん遺伝子をもつレトロウイルスとなる。

 

 ウイルスのがん遺伝子獲得

 

つまり、生体がもつがん遺伝子とウイルスがもつがん遺伝子は同じものである。

 

なお、ウイルスのがん遺伝子はエキソンのみで構成されており、生体がもつがん遺伝子はイントロンを含んでいる。そのため、p-oncとv-oncを合わせるとエキソン部分だけが相補的となり、生体の方のがん遺伝子はイントロン部分でループする。

 

 ウイルスと細胞のがん遺伝子

 

 がん遺伝子の必要性
前述のとおり生体はがん遺伝子をもっているが、実はほとんどの真核生物ががん遺伝子をもっている。つまり、がん遺伝子は正常に働けば生体にとって欠かせない重要な働きをしているのである。

 

がん遺伝子がコードしているタンパク質には、次のような働きをする因子がある。

 

・増殖因子
・増殖因子受容体
・シグナル仲介因子
・転写調節因子

 

・増殖因子
増殖因子は細胞表面の受容体に結合することで、細胞増殖を促す働きをする因子である。もし、増殖因子をコードしている遺伝子が活性化して増殖因子を必要以上に産生すると、活発な細胞増殖が起こりがん化する。

 

増殖因子の一つにPDGF(platelet-derived growth factor:血小板由来増殖因子)がある。そして、PDGFはsisという遺伝子領域によってコードされている。

 

sisは血小板を作る巨核細胞でのみ発現しているため、PDGFは巨核細胞で産生される。しかし、ウイルス感染によって感染細胞にがん化したsis遺伝子が組み込まれると、巨核細胞以外でもPDGFが産生されるようになる。

 

・増殖因子受容体、シグナル仲介因子
増殖因子が受容体に結合すると、受容体はシグナルを出す。シグナル伝達は細胞内のタンパク質をリン酸化することで行われる。正常状態では、受容体に増殖因子が結合している状態でないと、リン酸化は起こらない。

 

しかし、がん遺伝子由来の受容体は増殖因子がない状態でも細胞内にシグナル伝える働きをする。この受容体はチロシンリン酸化酵素をもち、細胞内にシグナルを送り続けるので細胞増殖が止まらずにがん化する。

 

 増殖因子受容体

 

・転写調節因子
遺伝子に作用して転写調節している物質のバランスが崩れるとがん化する。転写調節因子が適切な量だけ発現していれば、必要な量だけ転写される。

 

これらの因子が多く産生されると、必要ないのに多くのタンパク質ができてしまう。これによってがん化する。

 

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