タンパク質・アミノ酸の異化(窒素代謝)
タンパク質の異化には窒素代謝と炭素骨格代謝が存在する。なお、ここでは窒素代謝について説明する。
プロテアーゼ
タンパク質はアミノ酸がつながったものであり、アミノ酸同士は共有結合によってとても強い力で結合している。タンパク質は生命維持に不可欠であるため、勝手に結合が切れると都合が悪い。
しかし、タンパク質はいつか分解しなければならない。アミノ酸同士のペプチド結合(-CO-NH-)はプロテアーゼというタンパク質によって分解される。プロテアーゼとはタンパク質のペプチド鎖を切る酵素の総称である。
プロテアーゼはプロテイナーゼとペプチダーゼに分類さることもある。
プロテイナーゼはタンパク質の内側からペプチド鎖を切断する。これをエンドペプチダーゼという。それに対し、ペプチダーゼはタンパク質のアミノ末端(N末端)orカルボキシ末端(C末端)から1~2個のアミノ酸を順に切断していく。これをエキソペプチダーゼという。
エンド(endo-)というのは内側という意味で、エキソ(exo-)というのは外側という意味である。また、アミノ末端からペプチド結合を切断していくのをアミノペプチダーゼ、カルボキシ末端からペプチド結合を切断していくのをカルボキシペプチダーゼという。
タンパク質の分解
健康を維持するにはタンパク質やアミノ酸を摂取しなければならない。しかし、体内で合成されるタンパク質の内、それに対する必須アミノ酸の量が足りていれば十分である。過剰に摂取したアミノ酸は体内に蓄積しない。
タンパク質の分解はリソソームと細胞質(サイトゾル)の二箇所で行われる。リソソームは細胞小器官であるエンドサイトーシス等で取り込んだものを分解する。
リソソームは膜によって細胞質と分けられているので問題ないが、細胞質でタンパク質を分解する機能をもつことはかなり問題がある。なぜなら、細胞質にあるタンパク質が勝手に分解されていくことが考えられるからである。こうなると私たちの体は溶けてしまう。
しかし、実際にはそうならない。これは細胞質でタンパク質を分解するとき、特定のタンパク質だけを分解するように制御されているからである。この働きを行うためにユビキチンという小さいタンパク質が必要になっている。
ユビキチンはタンパク質に結合し「このタンパク質を分解する」という標的にする。タンパク質に数個のユビキチンが結合することでプロテアソームというプロテアーゼの一種によってタンパク質が分解される。なお、細胞質でのタンパク質分解にはATPが必要である。
窒素代謝
アミノ酸を分解するとき、まずアミノ基を除去しないといけない。これはアミノ基があるとアミノ酸が分解されにくいからである。
アミノ酸からアミノ基を除去した後にはアンモニアが残る。アンモニアは尿素という形に変えられて排泄される。アミノ酸からアミノ基をはずすときの反応は次のようになる。
1.アミノ基転移反応
アミノ酸のアミノ基はα-ケトグルタル酸に移される。アミノ酸の窒素はグルタミン酸へ運ばれ、アミノ酸はケト酸となる。
2.グルタミン酸の酸化的脱アミノ反応
ミトコンドリア内でグルタミン酸は脱アミノ化し、α-ケトグルタル酸とアンモニアに変化する。
3.アンモニアの輸送→尿素の生成
アンモニアは肝臓に輸送され、尿素回路によって尿素に変化する。
1のアミノ基転移反応にはトランスアミナーゼ(アミノトランスフェラーゼ)が作用する。トランスアミナーゼはアミノ酸からアミノ基を奪い、アミノ基を他のα-ケト酸に結合させることで他のアミノ酸を生じさせる。全てのトランスアミナーゼは補酵素としてピリドキサルリン酸(PLP)を必要とする。
アミノ基転移反応は可逆的な反応である。そのため、トランスアミナーゼはアミノ酸の合成と異化の両方に関与している。
ヒトの場合は窒素を尿素という形で排出するが、動物によって窒素を外に排出するときの形が異なっている。窒素はアンモニア、尿素、尿酸のいずれかの形で排出される。魚などはアンモニアとして排出し、陸上動物は主に尿素として排出し、鳥類は尿酸として排出する。
アンモニアの輸送
アンモニアは全ての動物にとって危険な物質である。例えばアンモニアには高い膜透過性があり、この作用のためにリソソーム内のpHが上昇して機能しなくなる。そのため、体内でアンモニアが生じた場合はすぐに処理しなければならない。
アンモニアは肝臓で尿素に変化するが、組織で生じたアンモニアを直接血液で運ぶのは危険である。そのため、組織で生じたアンモニアはグルタミンに変換して輸送される。肝臓にきたグルタミンはグルタミナーゼによって脱アミノ化してアンモニアを遊離させる。
グルタミン → NH3 グルタミン酸
グルタミナーゼ
また、筋肉で生じるアンモニアはグルコースを解糖して得られるピルビン酸を利用する。ピルビン酸はアラニンに変化し、アラニンの形で輸送される。肝臓にきたアラニンはピルビン酸になり、糖新生によってグルコースに変化する。これをグルコース-アラニン回路という。
このように、組織からアンモニアを運ぶときはアラニンorグルタミンの形で輸送される。
尿素回路
アンモニアはグルタミンまたはアラニンとして肝臓に送られて代謝される。これらのアミノ酸はグルタミン酸に変えられ、酸化的脱アミノ化反応でアンモニアが遊離する。このアンモニアは尿素回路によって尿酸に変えられる。
尿素の生合成は二酸化炭素、アンモニア、ATPの縮合反応によって生成するカルバモイルリン酸から始まる。この最初の反応はカルバモイルリン酸シンターゼⅠによって触媒され、アロステリック活性因子であるN-アセチルグルタミン酸が存在することで反応が起こる。
N-アセチルグルタミン酸が必要になるので、尿素回路の速度はカルバモイルリン酸シンターゼⅠによって決められる。
尿酸回路の反応に代謝異常があるとアンモニア中毒を起こす。
酵素 |
病名 |
カルバモイルリン酸シンターゼⅠ |
高アンモニア血症Ⅰ型 |
オルニチントランスカルバモイラーゼ |
高アンモニア血症Ⅱ型 |
アルギニノコハク酸シンターゼ |
シトルリン血症 |
アルギニノスクシナーゼ |
アルギニノコハク酸尿症 |
アルギナーゼ |
高アルギニン血症 |
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