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   I効果(誘起効果)

 I効果(誘起効果)
ここに「CH3COOH」と「ClCH2COOH」の二つの分子があるとする。それでは、この二つの分子を比べたとき、どちらの分子の方が強酸であろうか。

まず考えないといけないことは、「酸とはH+に依存する」ということである。つまり、酸となるためにはH+を放出しなければならず、そのためには電離が必要である。

「CH3COOH」の場合は「CH3COO-」「H+」に、「ClCH2COOH」の場合は「ClCH2COO-」「H+」にそれぞれ電離する。溶媒に溶かしたとき、どちらの分子の方が電離しやすいかを考えれば、どちらが強酸かを理解することができる。

そして、「CH3COO-」と「ClCH2COO-」において、どちらのイオンが安定かを理解することができれば電離のしやすさを予測することができる。

このとき、「イオンになったときに安定な方」が強酸である。なぜなら、イオンの形で安定な方がより電離しやすいからである。電離しやすいということは、それだけH+を放出するはずである。

・イオンでの安定性
「CH3COO-」と「ClCH2COO-」で赤色をつけた酸素原子に注目するとする。

このとき、「CH3COO-」の酸素原子よりも「ClCH2COO-」の酸素原子の方が電子が引きつけられていることが分かる。なぜなら、「ClCH2COO-」には塩素原子Clが存在しており、塩素は電気陰性度が高いからである。Clが存在する分だけ電子が必寄せられるのである。

電子が引き寄せられる方が、その分だけマイナスに荷電しやすい。つまり、電離したときにより安定となるのである。

・まとめ


よって、「ClCH2COOH」の方が強酸であるといえる。

・I効果(誘起効果)について
「ClCH2COOH」が「CH3COOH」よりも強酸であるには、塩素原子Clが関係している。この場合、Clは遠くの酸素原子にまで影響を及ぼしている。

このように、ある原子が他の原子に対して静電気的に影響を与える作用I効果(誘起効果)という。

なお、「CH3COOH」「ClCH2COOH」「Cl2CHCOOH」「Cl3CCOOH」を比較すると、右にいくほど強酸となる。これは、Clが置換基として多くなると、その分だけ酸素原子の電子を引き付ける力が増大するからである。