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   ハロゲンの反応

 ハロゲンの性質
ハロゲン化合物とは炭化水素にハロゲンが結合しているものである。ハロゲンの特徴としては求核試薬による置換を受けやすいことにある。

この性質はとても重要であり化合物に官能基を入れる場合、化合物にハロゲンを導入してから置換させるという方法がとられる。

例えば、CH3Ch2-ClにOH-を作用させるとCH3Ch2-OHになり、CN-やNH3を作用させるとCH3Ch2-CN、CH3Ch2-NH2となる。

ただし、共鳴で二重結合性を持つものは安定なため置換反応を受けにくい。

   

 グリニャール試薬
ハロアルカンにマグネシウムを反応させるとグリニャール試薬(マグネシウム化合物)を得ることができる。グリニャール試薬の場合、マグネシウムは正に分極しておりその隣の炭素は負に分極している。

   

このため、グルニャール試薬はケトン(C=O)のように正に分極している炭素と反応する。以下にグリニャール試薬の反応を示す。

   

 求核置換反応(SN1反応、SN2反応)
求核試薬(Nu-)とは電子密度の低い炭素などと反応して、多くは結合を形成する試薬である。ここではハロゲン化アルキル(C-X結合)が求核試薬に置換される反応(C-Nu結合に置換)を示す。

求核試薬の多くはアニオンであり、負電荷をもっている。しかし、実際にはアニオンでなくても孤立電子対をもっていればよい。求核試薬の例としてヒドロキシル基やアミノ基などがある。ヒドロキシル基はアニオンであるが、アミノ基は負電荷をもっていない。そのかわり、アミノ基には孤立電子対がある。

ハロゲン化アルキルにメタノールやアンモニアを反応させると、ヒドロキシル基やアミノ基を導入することができる。

求核試薬反応はSN1反応(1分子求核置換反応)とSN2反応(2分子求核置換反応)の二つに分けることができる。

・SN1反応
この反応は脱離基(ハロゲン)が自発的に脱離することから始まる。つまり、C-X結合しているハロゲンが勝手に脱離してカチオンとなる。この炭素に求核試薬が攻撃するのである。下にメタノールを求核試薬としたときの反応を示す。

 

ハロゲンが脱離した後にはカチオンが生じる。このカチオンに求核試薬が攻撃するとき、@の方向からでもAの方向からでも攻撃できる。そのため、生成物はS体とR体の割合が1:1のラセミ体を形成することになる。

SN1反応ではハロゲンが自発的に脱離する速度が遅く、ハロゲンが脱離した後のカチオンに求核試薬が反応する速度は速い。つまり、ハロゲンが脱離する速度によってSN1反応全体の反応速度が決まる。そのため、反応速度は基質濃度に依存するが求核試薬の濃度には依存しない。

SN1反応と SN2反応の1と2の文字の違いは、「1分子の濃度が反応速度を決める」か「2分子の濃度が反応速度を決める」の違いである。

SN1では反応するとき脱離した後に生じるカチオンが安定なほど、ハロゲンが脱離しやすいほど、溶媒の極性が大きいほど起こりやすい。つまり、生じるカチオンが第三級>第二級>第一級の順で、ハロゲンがI->Br->Cl-の順ほど反応が起こりやすい。

・SN2反応
この反応では脱離基の180°反対側から求核試薬が攻撃する。求核試薬が結合を作り始めるのと同時に脱離基が解離し始め、遷移状態では求核試薬、脱離基ともに負の電荷を帯びることになる。その後、脱離基が解離して反応が完了する。

 

この反応は中間体を形成しない一段階の反応であり、求核試薬が基質に衝突(攻撃)することで反応を開始する。そのため、反応速度は基質と求核試薬の両方の濃度に依存する。

SN2反応では立体障害の関係で第一級>第二級>第三級の順で起こりやすい。ただし、第三級でSN2反応が起こることはないと考えられている。また、溶媒の極性が高いとSN1で反応が進行するので溶媒の極性は低い方が良い。

 脱ハロゲン化水素の機構(E1反応、E2反応)
SN1反応、SN2反応の求核置換反応では求核試薬が関与していたが、求核試薬としてではなく塩基として働くとアルケンを生じさせる。求核置換反応では求核試薬が炭素を攻撃するが、E1,E2反応では塩基が水素を攻撃する。

SN1反応にE1反応が対応し、SN2反応にE2反応が対応している。E1反応では1分子の濃度が反応速度を決める。それに対し、E2反応では2分子の濃度が反応速度を決める。

・E1反応
この反応はSN1反応と同様に脱離基が自発的に脱離することから始まる。その後、カチオン中間体からH+が外れ、二重結合を形成する。

 

E1反応とSN1反応は全く同じ中間体を通って反応し、速度の速さは基質の濃度に依存している。そのため、「E1反応だけを起こす」や「SN1反応だけを起こす」などの制御は困難である。 E1反応とSN1反応のどちらが主に起こるかは求核試薬の性質による。

反応の速度は第三級>第二級>第一級の順で起こりやすく、中間体からプロトンが脱離するときに安定なアルケンが生成しやすい。これはセイチェフ則という経験則に基づく。セイチェフ則とは、「プロトンは水素の数が少ない炭素から外れる」というものである。

 

・E2反応
E2反応は2分子反応であり、反応速度は基質と塩基の二つの濃度に依存している。

E2反応では脱離基の隣の炭素のHを攻撃して、それと共に脱離基が解離して二重結合を形成する。二重結合が形成するとき、E1反応で説明したときと同じようにセイチェフ側で反応が進む。

 

この反応の場合、主生成物にはシス型とトランス型が考えられるが、ニューマン投影式で考えるとトランス型の方が主生成物であると理解できる。メチル基の位置がトランスではアンチ配座でシスではゴーシュ配座である。

 

また、E2反応では脱離するハロゲンと水素がお互いにアンチ配座しているアンチペリプラナーの関係でないといけない。

   

なお、SN2反応は炭素を攻撃するため炭素に置換基があると立体障害が起こるが、E2反応は水素を攻撃するため立体障害をあまり受けない。つまり、第三級でも反応は進行する。