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役に立つ薬の情報~専門薬学

吸着クロマトグラフィー

 

 クロマトグラフィーとは
クロマトグラフィーとは、ある物質を分離・精製する方法のことである。この技術により、二つ以上混ざっている混合物を単一の純物質にするなどが可能である。

 

 TLC(薄層クロマトグラフィー)
吸着クロマトグラフィーの一つにTLC(薄層クロマトグラフィー)がある。まずは、TLCを理解した上で次の話に進もうと思う。

 

さまざまな物質が混ざっており、これをTLCによって分けようと思う。このとき、TLCにさまざまな物質が混ざっている溶液をスポットし、特定の溶媒で上げれば物質は分かれてくれる。

 

 TLCの原理

 

このとき、「スポットを打った原点」から「溶媒が上がった先端」までの距離をBとする。また、「スポットを打った原点」から「スポット中心までの距離」をAとする。

 

このときの「A/B」の値をRf値という。このRf値は物質固有の値である。

 

 Rf値

 

・なぜ物質によって分かれるのか
TLCではガラス面の上にシリカゲルがコーティングされている。このシリカゲルの構造を見てみると、-OH基がたくさんあることが分かる。

 

 TLC(薄層クロマトグラフィー)

 

一つだけ覚えてほしいことは、シリカゲルは極性がものすごく高いということである。なぜなら、多くの「-OH」をもっているからである。

 

それでは、もしスポットした物質の極性が高かったらどうなるであろうか。物質の極性が高いということは、シリカゲルとよく相互作用するということである。つまり、シリカゲルに強く吸着するのである。

 

溶媒で上げるとき、当然ながらシリカゲルと強く吸着している方が上がりにくい。逆にいえば、シリカゲルとの相互作用が弱い物質ほど上がりやすい。つまり、物質の極性が低いと上がりやすいのである。

 

これらの性質を利用して、物質を分離するのである。

 

・溶媒の極性
それでは、TLCを上げるための溶媒は何でもいいかと言えばそうでもない。物質によって展開溶媒を変えないといけない。

 

今、極性が低い展開溶媒を使うのとする。このとき、極性の高いシリカゲルに吸着している物質を引き込むことができない。つまり、シリカゲルに吸着している物質はその場所に留まることになる。

 

それでは、展開溶媒の極性を上げてやればどうなるだろうか。展開溶媒の極性を上げると、シリカゲルと強く結合している物質は溶媒の方にも流れるようになる。なぜなら、シリカゲルだけでなく溶媒とも相互作用し始めるからである。

 

そして、極性を上げれば上げるほど物質は溶媒の方に流れやすくなる。つまり、展開溶媒の極性を上げると、TLCでの物質は上がりやすくなるのである。

 

ここで、展開溶媒として酢酸エチルとヘキサンを用いるとする。

 

このとき、展開溶媒として「酢酸エチルのみを使用した場合」と「ヘキサンのみを使用した場合」では、酢酸エチルのみを使用した場合の方が、物質のスポットは高い位置に表れる。実際にはこれら(酢酸エチルやヘキサン)を混ぜ、その混ぜる比率によって溶媒の極性を変えるのである。溶媒の極性を変えることにより、使う展開溶媒を考えるのである。

 

それでは、なぜ「酢酸エチルのみを使用した場合」の方がスポットが高い位置に表れるかであるが、これは酢酸エチルの方が極性が高いからである。そして、構造式を思い出せば酢酸エチルの方が極性が高いことが容易に想像できる。

 

 酢酸エチル、ヘキサン

 

ヘキサンは炭素が六個連なった形をしている。つまり、ただの炭化水素である。炭化水素ということは、「油」ということであり、当然油は水に溶けにくい。つまり、ヘキサンはとても極性が低いので極性の高い水に溶けにくいのである。

 

それに対し、酢酸エチルはエステルをもっている。酸素原子は電気陰性度が高い原子なので、当然ながら酢酸エチルのエステル部位は分極している状態(電荷を帯びている状態)となっている。分極しているということは、それだけ極性が高くなるということある。

 

また、酢酸エチルは構造内に三つの炭素原子をもっているのに対し、ヘキサンは六個の炭素をもっている。炭素をもてばもつほど極性は低くなる。それだけ油に近づくのだから、これは容易に想像できる。

 

そのため、「酢酸エチルの方が構造内にもつ炭素数が少ない」というのも、酢酸エチルの方が極性が高い理由となる。

 

 カラムクロマトグラフィーによる分離
TLCの原理を理解すれば、カラムクロマトグラフィーによる物質の分離を理解することができる。なぜなら、原理はほぼ同じだからである。カラムクロマトグラフィーでは、固定相としてシリカゲルなどを使用する。ここに移動相として溶媒を流す。

 

今ここに「エストリオール」「エストラジオール」「エストロン」が混ざっている溶液があるとする。カラムクロマトグラフィーでは、これら三つの物質を分けることができるのである。

 

 「エストリオール」「エストラジオール」「エストロン」

 

まず、極性の強さから考えてみたいと思う。極性の強さは「エストリオール>エストラジオール>エストロン」となっている。つまり、シリカゲルには「エストリオール>エストラジオール>エストロン」の順で強く結合しやすくなっている。

 

移動相を流したとき、この三つの中ではシリカゲルと一番結合しにくいエストロンがまず先に出てくる。その次にエストラジオール、最後にエストリオールが出てくる。この流れる速さの違いによって物質を分離するのである。

 

 カラムクロマトグラフィー

 

移動相であるが、時間短縮のため速く分離させたい人なら極性の高い移動相によって分離するだろうし、ゆっくりでもいいから確実に分離させたい人なら極性を低くした移動相によって分離すると思われる。

 

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